前回は、「暗記型教育」から「思考型教育」へ転換すべき理由を解説しました。今回は、学校教育の展望について見ていきます。

アメリカを凌駕するほどの「思考教育」の徹底を

アメリカの学校教育が思考重視であることは、ソフトバンクの孫社長も指摘していました。この際、一気にアメリカを凌駕するぐらいに思考教育を徹底するのです。

 

何度も書いてきたように、思考教育とは正解を導き出すことが目的ではありません。問題でも、読書でも、パズルでも、将棋でも構わない。とにかく簡単には答えの出ない問題に取り組んで、頭を動かし続けること。これが思考の訓練になるのです。

 

その時、先生の役割は「考師」に徹すること。問題の正解へと子どもたちを導くことは、考師の仕事ではありません。子どもたちが考え続けられるように、励ますことが最も大切な仕事です。子どもたちに質問を投げかけて、頭を刺激し続けること。そのために子どもと一緒に、自分も問題を考え続ける。子どもたちに自分の意見を伝えるのもよいでしょう。

 

先生が間違ってはいけない、知らないことがあってはいけない、おかしなことを言ってはならない、などと心配する必要はまったくありません。役割はあくまでも考師、子どもたちの頭を動かし続けるためなら、何を言っても構わない。「先生はさっぱりわからないから、みんなで考えて」でも構わない。

 

そのためには学校教育をどう変えればよいのか。クラス運営の仕方は、どうあるべきか。大学の教育学部で徹底的に研究していただきたいと思います。明治維新以来、連綿として続いてきた日本の教育を、この際ぶっ壊すぐらいの勢いで変えなければなりません。小学校から科目ごとに担当の先生を置くことも一案です。少なくとも思考を専門とする教員を養成してはいかがでしょうか。

 

暗記ではなく、思考させる。やる気のある子はもちろん、たとえやる気のない子どもが混ざっていたとしても、教室の空気に緊張感を持たせるためには、どうすべきか。やり方はあるはずです。教育学部の先生方が、一刻も早く解決法を見出してくれることを祈ります。

「なぜ」「どうして」と考えるのは人間の生存本能

もちろん、簡単にできるとは思いません。私の塾に通ってくる子どもたちでも、最初からすんなりと思考できるようになるわけではないのです。中には、なかなかやる気にならない子どももいます。

 

けれども、仮にやる気のない子どもがいたとして、その原因は何でしょうか。おそらくその子は、これまでに考える楽しさ、頭を使う面白さを経験したことがないのです。勉強なんてつまらないと頭から思い込んでいるのです。そんな子どもにも可能性はあります。その可能性を断ち切ってしまってはいけない。彼らも幼い頃には、さまざまなことに対して「なぜ?」「どうして?」と思ったに違いありません。それは、人が人である限り、根源的に抱く疑問なのです。あるいは生存本能に根ざしている、といっても間違いではないでしょう。

 

大昔、大自然の中で暮らしていた人間は、不審なものを見聞きするたびに「なぜ?」と「どうして?」を考えなければ、生き残ることはできなかったのです。小学校1年生から思考教育を導入することによって、その本能を呼び戻してあげればよいのです。だから、考える素材は何でもいい。宮本先生の算数教室で使われているような算数パズルでもいいし、もっと簡単なゲームでもいい。要は、子どもたちが最低20分でいいから、頭を動かして考え続けることができれば、ネタは何でもいいのです。

東大・京大に合格する 子どもの育て方

東大・京大に合格する 子どもの育て方

江藤 宏

幻冬舎メディアコンサルティング

「うちの子は勉強しているのに成績が上がらない」、「あの子は勉強しているように見えないのにいつも成績がいい」と感じたことはありませんか? 実はわかりやすい授業ほど、子どもの可能性を奪っているとしたら──。 40年に…

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