「頭を使える」ことと「頭の良し悪し」はほとんど関係ない
前回の続きです。
間違ってほしくないのは、何歳から始めたとしても、正しく訓練しさえすれば、必ず頭は柔らかくなることです。やれば必ずきちんと考えることができるようになります。中学から始めたとしても、大学受験で国公立を狙えるレベルぐらいには、まず間違いなく到達します。
頭の良し悪し、例えば知能指数と頭を使えるようになるかどうかは、ほとんど関係がありません。実際、私の塾にやってくる子どもたちのほとんどがごく普通の知能レベルです。それでも続けていれば、みんながそれなりに頭を使えるようになっていく。これは非常に興味深い現象であり、かつ子どもたちを指導する立場からすれば、とてつもなく自信を与えてくれる経験です。
中には、現時点では頭を使うことはできないけれども、がんばる力を持っている子どもがいます。例えば覚える勉強をがんばって、公立のトップ高校に合格していく子どもたちです。こんな子どもたちが、私の塾にやってくると、初めての思考訓練にもがんばるのです。
1時間、2時間と諦めずに頭を使い続ける。その結果、わずか1日で頭を使えるようになるケースが、これまでに何度もありました。その意味では、考える力とがんばる力はセットで考えた方がよいのかもしれません。
「解答する」ことよりも「考える」ことが大事
あるいは、こういう例もあります。小学校3年生の子どもが3人います。彼らに同じ算数の問題を解かせました。1人は1分もかからずに答えを出しました。別の子どもは、少し考えたのでしょうが、放棄しました。もう1人の子どもは、30分考え続けたけれども解くことができませんでした。
この問題に挑戦した3人のうち、最も良いトレーニングになったのは誰でしょうか。すぐに解けた子どもにとって、この問題はやる必要がなかった問題といえるでしょう。おそらくこの子は、問題を見た瞬間に解き方がわかった。そんな問題を解くことは時間の無駄でしかありません。
少し考えて諦めた子どもには、今後の伸びしろがあると思います。今は諦めるしかなかったとはいえ、それは考え続ける訓練をしていないだけのことです。誰かに励ましてもらえば、あるいはまわりにいる子どもたちがみんな真剣に考えているような場に放り込まれれば、また考える面白さを少しでも知れば、5分、10分と少しずつ長く考えられるようになります。
そして、最も良い訓練になったのが、最終的に問題を解くことはできなかったにせよ、30分間考え続けることのできた子どもなのです。