粗利は40%超…中堅住宅メーカーによる暴露
「住宅建築業界のゆがみ」となる第2の原因は、経費です。住宅メーカーの経費について、『日経ホームビルダー2010年4月号』の中で中堅住宅メーカーが暴露していたので紹介しましょう。
「社員30人の人件費、複数の事務所経費、モデルハウス出店費、広告費など固定費が増加し、住宅価値もブラックボックス化し、粗利益率を40%超に設定せざるを得なかった」
この記事に書かれている住宅メーカーは、仙台で住宅展示場を建てて営業をしていたのですが、仙台から撤退した後に日経誌で情報を暴露したのです。
この記事に書かれている、「粗利が40%超」に着目してください。この会社は有名会社ではなく、年商10億円程度の中堅メーカーです。それでも経費を捻出するため、粗利を40%以上も乗せないと経営が成り立たなかったということですから、大手住宅メーカーや有名ローコスト会社であれば、これより粗利が多いのは間違いないでしょう。
なぜなら、大手住宅メーカーや有名ローコスト会社が使う広告宣伝費、営業経費は、中堅メーカーの比ではありません。大きく有名になればなるほどこういった費用が多くなるので、それらを捻出するために粗利をより大きくする必要があるのです。
ほかにも住宅メーカーの粗利について、こんな記事もあります。
「ハウスメーカーの家の値段には住宅展示場の管理維持費(1棟につき1億円と言われる)広告宣伝費(朝日新聞と読売新聞の広告だけでも5〜10億円)などの膨大な金額が含まれている。4割から5割はそれだという人もいる。企業利益も当然加わるから家の原価は半値以下ということになる」
※雑誌『室内』(工作社)2001年11月号から引用
住宅メーカーが存続するために必要な経費は、家の原価に上乗せするしかありません。仙台の場合、工務店が建てる一般的な注文住宅の価格は4LDK、36坪で2000〜2500万円くらい。ところが大手メーカーの最終的な価格は、同じ仙台で、同じ間取り、同じ坪数で、平均2800〜3300万円くらいにつり上がります。
異様に高い経費の犠牲になる「原価」「人件費」
経費をふんだんに使った住宅メーカーの経営は、いろいろな悪影響を建築の現場に及ぼします。
まず、住宅メーカーが経費を原価へ上乗せしてしまうと、実質の原価が減ることになるので建築を請け負う会社の経費が減ることになってしまいます。つまり、実際の建築現場で働く人たちの人件費が削られてしまうのです。
建築現場で長期に渡って丁寧な仕事をしていると、現場の経費がかさみ資金回収ができなくなるので、短工期で工事を進めることになります。また現場に適正な経費が回らないということは、材料のグレードが安いものに下げられている危険性もあります。このように適正な経費が回らない現場の状況が、欠陥住宅を生む一因となるのです。
住宅メーカーは、お客様が希望する価格で家を建てるために、一番簡単に削減できるはずの広告宣伝費、営業経費を削減するのではなく、大切な材料や工事手間という家の原価を下げます。そして家の原価を下げてそこに広告宣伝費、営業経費を乗せて希望価格にあわせるのです。それが大手住宅メーカーや有名ローコストメーカーの考え方です。これでは良質な家など、とても建てることはできません。
経費が異様に高く、そのために原価や人件費が犠牲になっている。これが「住宅建築業界のゆがみ」となる第2の原因です。
経費をたっぷりと使って作り上げるテレビのコマーシャルは、それは素晴らしい出来栄えですし、住宅メーカーがスポンサーとなってつくられる番組は、どれも素晴らしい外装やインテリアばかりです。これからマイホームを建てようとしている多くのひとたちに好ましい印象しか与えません。しかし、こうした素晴らしい演出は、過去に家を建てたひとたちが支払った代金で賄まかなわれていることを忘れてはいけません。
家の代金に経費を上乗せすること事態は企業が成り立つためには仕方がないことです。しかし代金に経費が過剰に上乗せされていることを知らずに契約してしまうからトラブルが生じることになるのです。このことを忘れてはいけません。