法的根拠を明示できれば、手直しの要求も容易に
前回に引き続き、トラブルに遭わないために必要となる基本的な対策を見ていきましょう。
次に大事なことは、あなた自身が住宅建築に関する正しい知識を持つことです。では、住宅建築に関して、知っておくべき必要な知識を簡単にご説明します。
●法律の基礎知識
住宅建築に関わる法律といえば、主に「建築基準法」、「建設業法」などです。これらの法律の難しい条文を覚える必要はありませんが、最低限知っておけば契約の際に有利なものもあります。
例えば、契約前に明細見積書を要求するときに「建設業法第20条がその根拠です」と言えれば、相手は断りにくくなります。建設業法第20条は、「建設工事の見積り等」について記載されているので、契約前にその条文だけを読んでおけば安心です。
ほかにも施工チェックを自分で行う場合、不具合があったときなどは自身で手直しを要求することになりますが、その際、建築基準法等の不具合の根拠となる証拠が必要となります。
●建築の基礎知識
家づくりはほとんどのひとはたったの1回のことですが、あなたがこれから一生涯住む家です。家を建築するこの機会に、自分でも建築の勉強してみるのはいかがでしょうか。工法や間取りのこと、インテリアのこと。特に工法などの基礎知識があれば、工事中に現場を見ておかしな部分を事前に発見できるかもしれません。
この本はトラブルを防止することが目的なので、こうした知識について詳細にはお伝えしませんが、建築関係の本はたくさん出ているので書店や図書館で探してみてください。学べば学んだ分だけ、あなたの家が良くなりますよ。
●ファイナンシャルの基礎知識
家を建てるには多額のお金が必要になります。この金額を一括で支払える人はそうそういないでしょう。そこで、住宅ローンを利用することになります。家は建ったけれど、その後の生活が住宅ローンの返済によって難しくなっては大変です。
そこでこの機会に、住宅ローンの支払いと共に、ライフプランを作成することをお勧めします。ライフプランとは、「人生設計」のことです。人生には、就職や結婚、出産、子どもの進学、退職などから、車や家の購入といった大きな買い物のこと、また親との同居や介護など、人生にはさまざまなライフイベントがあります。
こういった人生の設計図を描き、そのイベントごとに必要なお金のことを考えておくのです。そうすれば将来に渡って無理のない予算を組むことができます。わからない人は、ファイナンシャルプランナーに相談するといいですね。きちんと将来に渡ってお金のことが見えていると、安心して家づくりに励むことができるというものです。
相手の意のままになっては、望む家は建てられない
住宅メーカーと契約する際に利用する「会社選択チェックシート」を本書の巻末付録につけていますが、万全を期すなら専門家に施工チェックを依頼したほうが安心です。専門家はその知識だけでなく、これまでのさまざまな事例を蓄積していますので、あなたの心強い味方になってくれるはずです。
また何かのトラブルがあったときでも、外部の専門家がいると何かと心強いことでしょう。専門家に依頼すると有料だからと躊躇するひともいますが、トラブルに遭ったときの被害額のほうが数倍も大きいことを考えると、結果的に費用が安く済むことも多いのです。
本書には、トラブルを防ぐための会社選択チェックシートが付録として巻末にあります。このシートをぜひ使ってください。このチェックシートには、業者にとって都合の悪いことが書いてありますが、それらはすべて施主さんを守る正当な主張です。営業マンに良い顔をされないからといって、遠慮することはありません。「よい客」になる必要はないのです。むしろ「よい客」だと営業マンに思われてしまうと、主導権は営業マンが握ることになってしまいます。
なんでも意のままになる客、それが「よい客」なのです。つまり、「よい客」と思われてしまうと、施主側が不利になるルールを思いのままに適用され、自分が望む予算や内容では家が建たなくなる可能性がさらに高まるということです。
もしチェックシートに難色を示すようなら、その業者に執着せず、受け入れてくれる良心的な業者を探しましょう。