大部分の会社が守らない「契約前の明細見積書」の提出
「住宅建築業界のゆがみ」となる第3の原因は、法律の抜け穴です。なぜ住宅建築はトラブルが多いのかというと、その理由には住宅に関する法律には罰則がない、または甘いというものがたくさんあるのです。住宅建築でトラブルが発生する最大の原因で、諸悪の根源でもあります。
例えば前回の連載でも述べたように、明細見積書を出さない会社がたくさんあります。
公共工事では、施主側が契約前に明細見積書を提出することを条件にします。しかし一般の住宅建築では、明細見積書の提出を条件とする施主さんはほとんどいないため、明細見積書が契約前に提出されることは極めてまれです。建設業法では明細見積書の提出を掲げていますが、大部分の会社が守っていないのが現状です。
以下に建設業法の一部を掲載します。
建設業法
(建設工事の見積り等)
第20条
1.建設業者は、建設工事の請負契約を締結するに際して、工事内容に応じ、工事の種別ごとに材料費、労務費その他の経費の内訳を明らかにして、建設工事の見積りを行うよう努めなければならない。
2.建設業者は、建設工事の注文者から請求があったときは、請負契約が成立するまでの間に、建設工事の見積書を交付しなければならない。
罰則規定がないため、建設業法の20条は守られない
「建設業法」では、このように記載されているにもかかわらず、なぜ守られていないのか解説しましょう。
まず、正確な明細見積書を顧客に提示すること自体が、「努めなければならない」という努力目標になっているのです。
2項では見積書の交付が義務化されていますが、こちらでは1項にある「工事の種別ごとに材料費、労務費その他の経費の内訳を明らかにして」という部分が削除されています。つまりこれらの記述から、「明細見積書を出さなくても違法ではない」という見解が成立してしまうのです!
この「抜け穴」を利用して、ほとんどの会社が不十分な一式見積書を提示してきます。工事の種別ごとに材料費、労務費その他の経費の内訳を明らかにした「明細見積書」を提示してくる業者は、探すのが大変なくらい少ないのです。