「頼らなかったほうが損なの?」次男が打ち明けた本音
電話を終えた敏夫さんは、和子さんに相談しました。
「長男が困っていたから助けただけなのに、そんなにおかしいことをしたのかな」
和子さんは、援助したこと自体は間違っていなかったと思う一方、次男の気持ちも理解できると話しました。
「裕介だって、学費を払うのは大変だったはずよ。私たちが何も聞かなかったから、相談しづらかったのかもしれないわね」
文部科学省『令和5年度子供の学習費調査』によると、子ども1人当たりの年間学習費総額は、公立高校で約60万円、私立高校で約118万円となっています。大学進学に際しては、これまでの教育費に加えて、入学金や授業料、下宿費用などの負担も生じます。
ただし、敏夫さん夫婦が援助した300万円は、老後の貯蓄2,500万円の12%に相当する金額です。今後の医療費や介護費用も考え、孫への大きな援助を繰り返すつもりはありませんでした。
数日後、敏夫さんは裕介さんと直接話す機会を設けました。
「お前たちを軽く見ていたわけじゃない。あのときは直樹が困っていたから、助けることにしたんだ」
裕介さんはしばらく黙っていましたが、やがてこう答えました。
「俺たちも余裕があったわけじゃないよ。兄貴のところだけそんなに出してもらっていたなんて、知らなかった」
さらに、裕介さんはこう続けました。
「親に頼らずに頑張ったほうが損だったみたいで、なんだか納得できないんだよ」
敏夫さんは、次男が感じていたのは金額の差だけではなかったと気づきました。
それ以来、兄弟が実家で顔を合わせる機会は減っています。
敏夫さん夫婦は、今後の援助について改めて話し合いました。しかし、すでに長男の子に約300万円の援助を約束しており、次男の子にも同額を出すとなれば、老後資金への影響は小さくありません。
なお、祖父母による教育費の援助では、贈与税にも注意が必要です。
国税庁『No.4405 贈与税がかからない場合』では、扶養義務者が教育費として通常必要な金額を、必要な都度直接支払う場合、原則として贈与税はかからないとされています。一方、教育費の名目でまとまった現金を渡し、預貯金として残す場合などは課税対象となることがあります。
敏夫さんは、孫の将来を支えたいという気持ちは今も変わらないといいます。
「長男に援助するとき、次男のことまで考えが及んでいませんでした。あのとき、もう少し家族で話しておけばよかったと思います」
孫への経済的な援助は、家庭ごとの事情によって必要な金額が異なります。しかし、援助の差が大きい場合、理由が伝わらなければ不公平感を生むこともあります。老後資金への影響を踏まえて援助の方針を決めるとともに、家族の間で認識のずれが生じないよう、金額や支援の考え方について丁寧に話し合うことが大切です。
【関連記事】
■月20万円もらえるはずが…45歳・サラリーマン「ねんきん定期便」に抱いた違和感。「年金ルール」知らずにそのまま20年…65歳で受け取ることになる年金額に唖然「何かの間違いでは?」
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

