「最期までここで暮らしたい」夫婦で選んだ老人ホーム
「ここを出るしかないんでしょうか。もう5年も暮らしているのに……」
そう話すのは、79歳の正彦さん(仮名)です。妻の和子さん(76歳・仮名)とともに、住宅型有料老人ホームで暮らしています。
夫婦が入居を決めたのは5年前。正彦さんが74歳、和子さんが71歳のときでした。
「自宅の階段がつらくなってきて、妻と相談したんです。まだ元気なうちに、暮らしやすい場所へ移ろうと」
選んだのは、夫婦で利用できる居室があり、食事の提供や生活相談などのサービスを受けられる施設でした。
当時、夫婦の年金収入は合計月29万円。自宅の売却代金を含む預貯金は約5,500万円ありました。
入居一時金は不要で、2人分の家賃や管理費、食費などの基本料金は月約35万円。差額の月6万円と、日用品や医療費などの支出を預貯金から補う計画でした。
「年金だけでは足りませんが、貯蓄もある。これなら長く暮らせると思ったんです」
入居後の生活は快適でした。食事の支度や掃除の負担が減り、夫婦で近所を散歩したり、施設の行事に参加したりする時間が増えたといいます。
ところが入居から4年ほどたった頃、正彦さんが自宅で転倒し、大腿骨を骨折しました。手術とリハビリを経て施設に戻ったものの、以前のようには歩けなくなり、要介護3の認定を受けます。
「妻に手伝ってもらえば、何とかなると思っていました」
しかし和子さんも膝に痛みを抱えており、夫の移動や排せつの介助を十分に担うことはできません。
施設の担当者からは、外部の訪問介護サービスを増やす必要があると説明されました。さらに夜間にも介助が必要になる可能性があり、夫婦の居室で安全に生活を続けられるか、改めて検討することになったのです。
