「私の人生は、もう決まっているの?」娘が家を出た理由
その夜、麻衣さんは自室で一人、これからの生活を考えました。
結婚するかどうかは、自分でも分かりません。今は特定の相手もいませんが、だからといって、これから先の生き方まで決めたつもりはありませんでした。
「母を支えるのが嫌になったわけではないんです。ただ、私の将来について、私より母のほうが決めているように感じてしまって」
総務省『令和2年国勢調査』によると、2020年時点で40〜44歳女性の未婚割合は21.3%。結婚や住まいについての考え方は人それぞれであり、親子であっても、将来の希望が一致するとは限りません。
麻衣さんは数日後、母に一人暮らしを始めたいと伝えました。
「お母さん、私、やっぱり家を出ようと思う」
「どうして急に? ここにいればお金も貯まるのに」
「お金のことは分かってる。でも、一度、自分で暮らしてみたいの」
節子さんは納得できない様子でした。
「私が病気になったら、どうするの?」
「そのときは相談して考えようよ。でも、今から私がずっと一緒にいる前提で話すのは、やめてほしい」
麻衣さんは、母が一人で生活できる今のうちに、互いの暮らしを見直したいと説明しました。節子さんはしばらく黙っていましたが、最後には「あなたがそこまで考えているなら」と答えたそうです。
麻衣さんは以前から気になっていた賃貸マンションを内見し、実家から電車で20分ほどの場所にある1LDKを契約。初期費用や引っ越し代として約50万円かかりましたが、貯蓄から支払える範囲でした。
翌月、麻衣さんは実家を出ました。
「母が寂しそうにしていたので、少し迷いました。でも、また先延ばしにしたら、きっと同じ生活が続くと思ったんです」
一人暮らしを始めてからは、週に一度、母に電話をかけています。必要な手続きがあれば手伝いに行きますが、以前のように何でも引き受けることはなくなりました。
最近、節子さんから「今度、そっちの家を見に行ってもいい?」と聞かれたそうです。
「もちろん、と答えました。母とはこれからも仲良くしていたいですから」
麻衣さんは、実家を出たことを後悔していません。
成人した子どもと親が同居する場合、生活費や家事の分担だけでなく、将来の住まいや介護についても話し合っておくことが大切です。親子それぞれの希望を確かめ、必要なときに支え合える関係を築くことが、長く良好な関係を保つことにつながるでしょう。
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