「介護が増えれば、費用も変わります」5年目に示された選択肢
施設との面談で、正彦さん夫婦は今後の生活について説明を受けました。
「現在の介護サービスを増やす方法もあります。ただ、夜間の対応については、この施設でできることに限りがあります」
住宅型有料老人ホームでは、介護が必要になった場合、原則として外部の介護サービス事業者と契約して利用します。介護保険の支給限度額を超えるサービスや、保険対象外の支援を利用すれば、自己負担が増えることもあります。
担当者が示した試算では、今後の介護サービスや保険外の支援を含め、夫婦の月々の支出は約46万円になる見込みでした。
「今までも月35万円以上払ってきたのに、さらに10万円以上増えるんですか」
正彦さんは驚きました。
5年間で預貯金は約4,700万円に減少していました。これまでの取り崩しは、基本料金と年金の差額に加え、医療費や日用品代などを含めて約800万円です。
今後、毎月46万円の支出が続けば、年金との差額は月17万円、年間204万円になります。
さらに、正彦さんの介護状態が悪化した場合、必要なサービスを現在の施設で十分に確保できない可能性もあると告げられました。
「お金を払えば、ずっとここにいられると思っていたんです」
厚生労働省『令和6年社会福祉施設等調査』によると、2024年10月1日時点の有料老人ホーム(サービス付き高齢者向け住宅を除く)は全国で1万8,460施設、在所者数は59万1,173人に上ります。
有料老人ホームには介護付き、住宅型などの類型があり、提供されるサービスや介護への対応範囲は施設によって異なります。
正彦さん夫婦の場合、要介護3になったこと自体が退去理由ではありません。必要な介護を継続的に受けられるかという問題が、住み替えを検討するきっかけになりました。
面談後、和子さんは夫にこう話したそうです。
「私はできれば一緒に暮らしたい。でも、あなたに何かあったとき、私だけでは助けられないわ」
夫婦は娘にも相談し、介護付き有料老人ホームを含めて、2人で暮らし続けられる施設を探し始めました。
「5年間で友達もできました。離れるのは寂しいですが、これからのことを考えないといけませんね」
正彦さんは、まだ転居を決めたわけではありません。現在の施設で利用できるサービスを確認しながら、別の施設の見学も進めています。
老人ホームを選ぶ際には、入居時の費用や設備だけでなく、要介護度が上がった場合の対応、追加費用、住み替えが必要になる条件などを確認しておくことが大切です。将来の身体状況の変化を見据え、契約書や重要事項説明書の内容を家族と共有しておくことが、安心して暮らし続けるための備えになるでしょう。
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