(※写真はイメージです/PIXTA)

子どもが独立し、夫婦2人の生活に慣れた頃、成人した子どもが孫を連れて実家に戻ってくることがあります。困っている家族を助けたいと思っても、長年続けてきた生活のリズムを変えるのは簡単ではありません。食事の支度や家事、生活費の負担も増え、年金生活を送る親世代にとって、思いがけず大きな負担となる場合があります。 ※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。

「お母さんがいるから助かる」娘の一言に感じた限界

美咲さんは離婚後の生活を立て直すため、当面は実家で暮らし、貯蓄を増やしたいと考えていました。

 

「家賃もかからないし、お母さんがいてくれると本当に助かるんだよね」

 

悪気のない言葉だと分かっていても、和枝さんは複雑な気持ちになりました。

 

「娘が助かっている分、私の負担が増えていることには気づいていないのかなと思って」

 

同居前、夫婦の食費は月約5万円でした。それが5人暮らしになってからは約10万円に増加。光熱費も月1万円ほど高くなっていました。

 

美咲さんは生活費として毎月5万円を渡していましたが、増えた支出をすべて賄えるわけではありません。

 

さらに和枝さんにとって大きかったのは、家事に追われて自分の時間がなくなったことでした。週に一度通っていた体操教室も、孫の帰宅時間に合わせるため休みがちになっていたのです。

 

内閣府『令和7年版高齢社会白書』によると、2023年時点で65歳以上の人がいる世帯は2,695万1,000世帯で、全世帯の49.5%を占めています。高齢者のいる世帯では夫婦のみ、単独世帯がそれぞれ約3割を占め、親子三世代で暮らす世帯は以前より少なくなっています。

 

ある夜、和枝さんは夕食の片づけを終えたあと、美咲さんに話を切り出しました。

 

「お母さんね、最近ちょっと疲れているの」

 

「えっ、どうしたの?」

 

「5人分のご飯を毎日作るのが、思ったより大変なのよ。これからも一緒に住むなら、家事の分担を考えたいわ」

 

美咲さんは驚いた様子でした。

 

「ごめん。お母さんが何でもやってくれるから、甘えてた」

 

その後、家族で話し合い、平日の夕食は週3日を和枝さん、残りは美咲さんが担当することに。美咲さんが遅くなる日は、作り置きや総菜も利用します。

 

食費と光熱費についても実際の支出を確認し、美咲さんが毎月7万円を負担することになりました。

 

また、美咲さんは1年以内を目安に住まいを探し、独立する方針です。

 

「孫たちと暮らせるのはうれしいですよ。でも、私ももう71歳ですから」

 

和枝さんはそう話し、少し笑いました。

 

「娘が小さかった頃みたいには動けません。今は家族みんなで夕飯を作る日もあって、それが楽しいんです」

 

成人した子どもとの同居は、家族が困難な時期を乗り越える支えになることがあります。ただ、親世代の年齢や体力、家計の状況も年月とともに変わっています。同居を始める際には、生活費や家事の分担、今後の住まいについて具体的に話し合い、無理なく暮らせる形を考えておくことが大切でしょう。

 

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