不動産の贈与で押さえておきたい3つのポイント
今回の事例から分かるのは、不動産の贈与は「何円の評価になるか」が贈与の方法によって大きく変わるということです。押さえておきたいポイントは次の3つです。
1. 評価方法
1つ目は、評価の方法です。通常の贈与であれば、建物は固定資産税評価額、土地は路線価などをもとにした相続税評価額で評価します。
ただし、分譲マンションについては2024年1月から評価の方法が見直され、築年数や階数などによっては、従来より評価額が高くなることがあります。
2. ローンや敷金を含めて引き継がせる場合
2つ目は、ローンや敷金などの「負担」を一緒に引き継がせる場合です。
この場合は負担付贈与となり、評価は時価に近い価額になります。賃貸中の部屋では、借主から預かっている敷金を返す義務を引き継ぐことも、負担になりえます。
3. 贈与税以外の税金
3つ目は、贈与税以外の税金です。贈与で不動産を取得すると、登録免許税(固定資産税評価額の2%)と不動産取得税がかかります。相続であれば不動産取得税はかからず、登録免許税も0.4%で済みます。
また、自宅や貸付用の土地の評価を下げられる「小規模宅地等の特例」は、相続では使えても、贈与では使えません。
名義を移す前に、まず「贈与するか、相続を待つか」を比べる
田中さんのようなトラブルを防ぐには、名義を移す前に、次の順番で検討することをおすすめします。
まず、ローンは親が返済を続け、不動産だけを贈与できないかを考えます。ローンを引き継がせなければ負担付贈与にはならず、通常の評価で計算できます。
次に、贈与の方法を選びます。毎年110万円までが非課税の暦年課税のほか、60歳以上の親から18歳以上の子や孫への贈与であれば、累計2,500万円まで贈与税がかからない「相続時精算課税」を選ぶこともできます。
ただし、相続時精算課税で贈与した財産は、原則として相続のときに相続財産へ加えて相続税を計算しますし、小規模宅地等の特例も使えなくなります。
そのうえで、「いま贈与する」場合と「相続まで待つ」場合のそれぞれについて、贈与税・相続税・登録免許税・不動産取得税の合計を比べてみることが大切です。家賃収入がある部屋なら、毎年の家賃を誰が受け取るかによって、将来の相続財産の増え方も変わります。
「名義を移せば安心」と考える前に、評価額と税金の合計を一度試算してみる。不動産の贈与は、その一手間で結果が大きく変わります。
辻 光明
税理士法人 辻総合会計/株式会社 メディカル・アセッツ
公認会計士・税理士
