「固定資産税の評価額で考えれば大丈夫」と思っていた父
大阪市内に住む田中誠さん(仮名・70歳)は、20年ほど前に購入した分譲マンションの一室を、会社員の長女・美咲さん(仮名・42歳)に贈与しようと考えていました。部屋はいまは人に貸しており、毎月の家賃は12万円ほどです。
田中さんがこの部屋を買ったのは50歳のとき。購入の際に組んだ銀行ローンは、まだ800万円ほど残っています。家賃収入でローンの返済はまかなえているので、「家賃もローンも、まとめて娘に引き継いでもらえばいい」というのが田中さんの考えでした。
きっかけは、同年代の友人の相続トラブルでした。友人が亡くなったあと、家族が不動産の分け方でもめたと聞き、「自分が元気なうちに、名義だけでも移しておこう」と思い立ったのです。
田中さんは毎年届く固定資産税の通知書を見て、この部屋の評価額が土地と建物を合わせて1,000万円ほどであることを確かめました。
「時価は3,000万円ほどらしいが、税金は評価額で計算するはず。そこからローンの800万円を差し引けば、実質200万円の贈与だから、贈与税はほとんどかからないだろう」
そう考えた田中さんは、知り合いの司法書士に頼んで登記を済ませ、ローンの返済を美咲さんに引き継ぐことにしました。
翌年の贈与税申告で分かった、想定外の負担
翌年の春、美咲さんが贈与税の申告をしようと税理士に相談したところ、思わぬことが分かりました。
借入金ごと不動産を贈与する方法は、税務上「負担付贈与」と呼ばれます。負担付贈与で不動産を受け取った場合、その不動産は固定資産税評価額や路線価ではなく、「通常の取引価額」、つまり時価に近い価額で評価することになっています。
田中さんのケースでは、時価3,000万円からローン800万円を差し引いた約2,200万円が、贈与を受けた金額とされる見込みになりました。
親から18歳以上の子への贈与に使える暦年課税の税率で計算すると、贈与税はおよそ680万円にのぼります。「200万円の贈与」のつもりだった美咲さんにとって、とても払える金額ではありませんでした。
さらに、名義を移したことで、贈与税とは別に、登記の際の「登録免許税」と、後日届く「不動産取得税」の負担もありました。相続で取得する場合と比べると、これらの税金も重くなります。
