お金より不安なリタイア後の「時間」
リタイアを迎える人たちが最も大きな不安を感じるのは「時間」だという。1日の半分以上を占めていた会社生活がなくなると、最初は荷が下りたすがすがしさを感じても、だんだんと不安と虚無感が押し寄せてくるのだそうだ。手元に増えた自由な時間をどう活用するかでリタイア後の生活の質が大きく変わるという話を先輩たちから何度も聞いたことがある。
私はギャップイヤーを過ごす中で、朝9時の出勤と夜6時の退勤が必要なくなったときにどうやったら1日を充実させることができるのか練習してみた。まずは週単位でルーティーンを組んでみた。
3つのアルバイトとボランティアなどの定期的なスケジュールを入れ込んだあと、英語のチューターとのミーティングや読書クラブのような定期的な予定を入れ、残りの余暇時間はキャンプや友人との食事などで自由に埋めていった。
いざこのとおりに日々を過ごしてみたら、予想していたよりもゆっくり休む暇がない。それでも好きなオーディオブックを毎週1冊分くらいは聴き終えられた。ほどなくしてペットシッティングにコンサルティング、さらにはスタートアップのプロジェクトも始めたので、会社勤めをしていたときよりもむしろスケジュールと動線が複雑さを増し、一層ビシッと気を引き締めて過ごしている。
9時出勤・6時退勤の会社に勤めなくても自分でルーティーンは作れるし、そのルーティーンを繰り返す中で成長を続けていくことができている。会社に出勤しなくなっても、自分だけの時間割をベースに自分主導で生きていくことは決して難しくないのだという手応えを得た。リタイア後の最も大きな不安要素である「時間」も恐れる必要はないと、そんな揺るぎない確信が芽生えた。
リタイア後の社会的つながり…会社を辞めると人間関係も希薄に
会社勤めをしている間は、人間関係の大半も社内のつながりが多くなる。職場の同僚は家族と同じくらい長い時間を一緒に過ごす存在なので、仕事に限られないパーソナルなコミュニケーションも少なくなく、それだけ深い絆も築くことができる。
しかし、会社という共通点がなくなったら、そんな関係性も次第に薄れていってしまうものだ。同じ職場で働いていたときには唯一無二の親しさだったのに、会社を辞めると同時によそよそしくなってしまった友人が誰にだっているはずだ。
リタイアも会社を辞めることと似ている。だからこそ、勤め先がなくなったときに社会的なつながりをどう保っていけばよいのかは真剣に考えておく必要がある。
ギャップイヤーを通じて、この点に対するアイディアもつかむことができた。毎日顔を合わせる同僚はいないけれどグーグルを退社した人たちの定期的な集まりがあり、それを通じて各業界の情報を互いに共有し、交流を続けている。年齢からパーソナルブランドが出来上がっているというわけだ。
彼らが社会活動を継続しながら、いきいきと積極的に人とのつながりを築いている姿を見て、カッコいい歳の重ね方について日々考えている。そして、私も彼らのように素敵な高齢者にきっとなれるはずだと自分を奮い立たせている。
リタイア後の予行演習
1年をかけて、リタイア後のお金の使い方や時間の活用、そして社会活動について実際にいろいろな経験を通じて予行演習をしたことで、自信を持ってリタイア後のイメージを描けるようになった。周りよりも早めのリタイアをしようか悩んでいる人がいるなら、私のように少なくとも3か月以上の予行演習をしてみることをおすすめしたい。
漠然としていたイメージが手に取れそうなほど鮮明になり、どうやって暮らしていくか具体的なアイディアが生まれるはずだ。予行演習のあと、まだ準備が足りないと思ったならリタイアに向けての計画を修正していけばいいだけだ。
ロイス・キム
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