モトローラやイーライリリーを経てグーグルで16年間勤め、米国本社で部門長まで上り詰めたロイス・キム氏。30年におよぶキャリアの絶頂期にあった55歳のある朝、彼女は突然の解雇を宣告されます。グーグルから放り出された彼女は、この期間を「ギャップイヤー」と位置づけることで前向きに捉え、スーパーのレジ係やスタバのバリスタ、ライドシェアの運転手を掛け持ちする生活をスタートさせました。本記事では、ロイス・キム氏の著書『ロイス、グーグルをクビになる。』(すばる舎)より、掛け持ちバイト生活から見えてきた、「引退後のお金・時間・孤独」に対する不安を解消する“リタイアの予行演習”に迫ります。
もともと40歳でリタイアしようと思っていたが…
20代で会社員生活を始めたとき、「40歳まで会社で働いたら、そのあとはNGOでボランティアをしながら、大好きなトレッキングと運動をして暮らすんだ」と思っていた。
ところが、その40歳は予想していたよりもあっという間に訪れた。いや、より正確に言うならば30代があまりにも早く過ぎ去ってしまった。
30代は会社生活が最も充実する時期だ。成長の幅も一番大きくなる。何でもどんどん吸収して昇進もしつつ、仕事の楽しさに夢中になっていく。自分の仕事をもっと深く理解するようになり、さらに成果を出せるようにもなると、仕事が一層おもしろみを増す。後輩たちを育てる喜びも経験し、自分の担う役割も広がっていく時期だ。給料もぐんと上がっていく。
そんな30代を過ごしてから40歳を迎えると、気づけばリタイアしようなんて考えはどこか遠くへと消え去っている。40代も同じように過ごしながら「50になったらリタイアするんだ」と思っていたけれど、その計画も実現できそうになかったので、いつしかそう考えることを止めた。
50歳になればより高い役職にも就いて給料も上がり、社会的にもより認められるようになっていくのに、そのタイミングですべてを手放すことなんてできるのだろうか? 自分の経験値もスキルもピークに達しているときには、それを存分に活用するほうが賢明な選択じゃないのだろうか? そう考えていると50歳も60歳もほんのちょっとまばたきをした隙にすぐやってくるような気がした。
だから「リタイアする年齢なんてものは、まだ決めないでおこう。ボランティアや社会貢献は会社勤めをしながら並行して取り組もう」と考えを変えた。予想から外れず、私の50代前半はキャリアのピークだった。
世界各地にいる600人を超えるコミュニケーションチームの仲間たちと一緒に、スケールの大きい仕事をするおもしろさに夢中になっていた。英語の勉強にも熱心に取り組みつつ、新しい職場環境に適応しようと新入社員のような心持ちを保ちながら日々の1分1秒を無駄にせず懸命に、そして充実感を覚えながら過ごした。50代の最初の5年間は、そうやって月日があっという間に流れていった。突然職場から放り出されることになるとは夢にも思わないままに!
(チョン・キム・ギョンスク)
グーグルのディレクターからシリコンバレーのかけもちアルバイターになる。
モトローラコリア、イーライリリーコリアのマーケティング、広報・PRチームで働いたのち、2007年グーグルコリアにコミュニケーション統括責任者として入社し、12年間勤めた。50歳になった2019年、アメリカのシリコンバレーに赴任し、英語を母語としない社員として初めてグーグル本社のグローバル・コミュニケーションチームのディレクターに就任。
年齢を自身の限界と捉えずに挑戦を続ける行動力がメディアの注目を集め、『ユ・クイズ ON THE BLOCK』『世界を変える時間、15分(セバシ)』などに出演したが、その6ヵ月後に16年間をともにしたグーグルから人員整理のためメール1通で解雇されてしまう。しかし、突然訪れた変化を逆手に取り、30年間の社会人生活で最も自分が成長する特別な時間へと変える。会社中心ではない、自分だけのプロジェクトを始めたのだ。
本書では、グローバルなキャリアの舞台の高みで活躍していた著者が、予想だにしていなかった変化をどのように受け入れ、チャンスと捉えることができるようになったのか、そしてどうすれば自分主導で変化を起こせるのか、その姿勢と思考を具体的な経験を通して伝えている。
これまでの著書には、『このまま進もう、体力だけはあるんだから』『英語、今度こそやりきろう』(いずれも未邦訳)がある。
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連載16年働いたグーグルから解雇された55歳のその後…スタバ・スーパー・相乗りドライバーとしてのアルバイト生活