前回は、「CREマネジメント」に学ぶ個人所有不動産の管理術を説明しました。今回は、不動産の高値売却につながる「日常的な物件の管理努力」の重要性について見ていきます。

保有物件の資産価値を日常的に気にかけているか?

不動産のメンテナンス履歴の有無は金融機関も留意する点の一つです。それがはっきりしていないため、将来のメンテナンス費用の支出が読めないような不動産には、金融機関も融資するのを避ける傾向があります。

 

高値での売却を目指し、買い手の範囲を狭めないようにするには、金融機関からの融資を引き出せるような不動産であるべきです。この点からも、日常的にメンテナンスの手を加えていくのはもちろん、その履歴をきちんと保管しておくことが求められます。

 

そういう意味では分譲マンションにおける管理と同じです。維持管理にあたる管理組合やそれを構成する区分所有者は、自分たちのマンションの資産価値というものに敏感です。できるだけそれを落とさないように、日常的に努力を積み重ねています。資産価値の維持・向上を図ろうと、限られた予算内で建物に対する日常的なメンテナンスを実施したり定期的に大規模修繕工事を実施したりしています。分譲マンションと同じように資産価値を日常的に気に掛ける意識が、不動産の所有者一般にも欠かせません。

不動産の高値売却にとって重要な「パートナー」の存在

最後に、こうした意識と並んでもう一つ、不動産の高値売却にとって重要ではないかと考える点を指摘しておきましょう。それは、不動産のプロであるパートナーの存在です。分譲マンションでいえば、管理組合をサポートする管理会社が、そのパートナーとしての役割を果たしているかもしれません。それと同じような役割を果たす不動産のプロが、個人が所有する不動産一般にも求められていると考えます。

 

確かに、所有している不動産がテナントビルや賃貸住宅の場合には所有者のサポート役として管理会社がついているかもしれません。しかし、これらの不動産は分譲マンションのようには日常的に売買することを前提にしていないせいか、日常的な管理と資産価値の二つがあまり結び付いていません。例えば、将来の売却を考えるなら、建物賃貸借契約を定期借家の形態にしておく方がいいと再三指摘していますが、同じような観点からそのように提案してくる管理会社がいるでしょうか。

 

所有する不動産の高値での売却を実現するには、日常的に資産価値の維持・向上を気に掛けて努力を積み重ねていこうという意識が何よりまず求められます。さらにそれに加えて、そうした所有者の意識を資産価値の維持・向上にしっかり結び付けてくれるパートナーの役割を果たせる不動産のプロの存在も不可欠です。

本連載は、2016年6月29日刊行の書籍『はじめてでも高く売れる 不動産売却40のキホン』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

はじめてでも高く売れる 不動産売却40のキホン

はじめてでも高く売れる 不動産売却40のキホン

宮﨑 泰彦

幻冬舎メディアコンサルティング

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