EUの労働力人口の増加のうち約半分が「外国人移民」
若年層の高失業と対照的に、欧州でも高齢化による人手不足が生じるなか、医療・介護、建設、農業などの分野では移民労働者が不可欠な存在となっています。2025年5月8日の欧州中央銀行(ECB)のブログ記事※によると、2022~24年の3年間のEUの労働力人口の増加のうち外国人は約半分(310万人)を占めています。
ただし、移民労働者は「量」の面で人手不足を補っている一方、教育や専門資格を十分に活かせない「スキルのダウングレード(過少活用)」という「質」の課題に直面しています。
例えば、医師やエンジニアの資格を持ちながら、言語の壁や資格認証制度の不備のために介護や清掃業に就く事例が少なくありません。2023年のユーロスタットの最新統計によれば、非EU市民の「過学歴率(over-qualification rate; 短大以上の学歴でありながら中・低スキル職に就いている人の割合)」は39.4%と、自国民(20.8%)の約2倍となっています。この比率は、ギリシャ(69.6%)、イタリア(64.1%)、スペイン(56.0%)など南欧諸国で特に高くなっています。
さらに、移民の増加は政治問題化し、極右とされる政党が台頭しています。2024年6月の欧州議会選挙では、フランスで「国民連合(RN)」の得票率が31%で首位となり、ドイツでも「ドイツのための選択肢(AfD)」も16%の支持を得て第2党となるなど、反移民の極右政党の台頭が目立ちました。
2024年7月のフランス下院選挙では与党連合と左派連合がRNの勢いに歯止めをかけるために共闘し、2025年2月のドイツ総選挙では第2党となったAfDを外した大連立政権が成立しましたが、今では極右政党の影響力が無視できなくなってきています。
移民が労働市場と経済成長を支える存在となっている以上、移民のスキルをより有効に活用する一方、どのようにして社会に統合して政治的な摩擦を防いでいくかが、今後の欧州にとって最大の課題の1つといえるでしょう。
安田佐和子
経済アナリスト
ストリート・インサイツ
代表取締役
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