日本で「未経験の新卒」が手厚く育てられる一方、ドイツを除く欧州では「実務経験なし」で採用拒否…5,700万人が支援制度を頼る労働市場の過酷な現実

日本で「未経験の新卒」が手厚く育てられる一方、ドイツを除く欧州では「実務経験なし」で採用拒否…5,700万人が支援制度を頼る労働市場の過酷な現実
(※写真はイメージです/PIXTA)

近年、スペインやフランスをはじめとした欧州諸国では、若年層を中心とした高い失業率が大きな社会課題となっています。日本や米国を恒常的に上回る高失業率の背景には、どのような問題があるのでしょうか。本記事では、安田佐和子氏の著書『経済指標のキホン 数値から将来を読み解く』(すばる舎)より、ユーロ圏の労働市場の実態について解説します。 

日米よりも失業率が高いユーロ圏

●ユーロ圏の労働市場には解雇規制と雇用主の社会保険料負担という問題

●若年層の高失業の背景にも構造問題

●移民の増加は極右政党の台頭を招いている

 

ユーロ圏の失業率は2026年4月に6.3%と通貨統合後の最低水準近くで推移していますが、同月の米国(4.3%)や日本(2.5%)を大きく上回っています。特に25歳未満の失業率は14.7%と全体の2倍以上に達しており、スペイン(23.7%)、イタリア(16.9%)、フランス(21.4%)などの国では若年層の高失業が問題となっています。

 

出所:ユーロスタットよりストリート・インサイツ作成
[図表1]ユーロ圏の失業率 出所:ユーロスタットよりストリート・インサイツ作成

 

欧州の企業が採用に慎重な理由として、厳格な解雇規制と雇用主の社会保険料負担の重さが指摘できます。

 

フランスでは、従業員を解雇する際には「経済的理由」を明確に示す必要があり、労働審判所(Conseil de prud’hommes)が不当解雇と認定した場合には復職命令や補償金の支払いが命じられます。イタリアやスペインでも、不当解雇をめぐる裁判では労働者に有利な判決が出る傾向があります。ドイツの解雇規制はそこまで厳しくはありませんが、10人以上の事業所では社会的に弱い立場の人を保護する「社会的選択(Sozialauswahl)」が義務付けられています。

 

さらに、欧州諸国では企業の社会保険料負担が重いという問題があります。日本や米国では社会保険料は労使が折半ですが、欧州では被用者よりも雇用主の負担が重くなっています。経済協力開発機構(OECD)の2024年のデータによると、社会保険料の雇用主負担が労働コストに占める割合はフランスが25.7%、イタリアが24.0%、スペインが23.4%に達します。ドイツは16.8%とそれよりも低いですが、日本の13.6%や米国の7.5%を大きく上回ります。

 

出所:OECD“Taxing Wages 2025” よりストリート・インサイツ作成
[図表2]所得税と社会保険料(2024年、労働コスト比) 出所:OECD“Taxing Wages 2025” よりストリート・インサイツ作成

 

こうした制度は労働者を手厚く守る一方、新規採用のリスクを高め、企業が若者や未経験者を雇いにくくする副作用をもたらしています。ユーロ圏の高い失業率の背景には、「雇用を守る仕組みが強すぎて新しい雇用が生まれにくい」という問題があるのです。

次ページ欧州で若者が正社員になれない切実な理由

※本連載は、安田佐和子氏の著書『経済指標のキホン 数値から将来を読み解く』(すばる舎)より一部を抜粋・再編集したものです。

数値から将来を読み解く 経済指標のキホン

数値から将来を読み解く 経済指標のキホン

安田 佐和子

すばる舎

【投資の知識がなくても指標の見方・読み方・役立て方がよくわかる!】 【困ったときの用語集、索引も掲載!】 「GDP」「消費者物価指数」「失業率」など、ニュースなどでたびたび見聞きする経済用語や指標。しかし、それ…

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