有効求人倍率は、ハローワークの求人と求職の比率
●有効求人倍率はハローワークの求職者数1人当たりの求人件数
●最近では有効求人倍率と失業率の動向に乖離
●民間職業紹介経由の割合の上昇で有効求人倍率の重要性は低下
日本では、労働需給を見る指標として、公共職業安定所(ハローワーク)の求人と求職の状況を集計した厚生労働省の「一般職業紹介状況」もよく使われます。特に注目されるのは求職者数1人当たりの求人件数を示した「有効求人倍率」であり、この数字が1を超えると求職者よりも求人が多いという意味になります。ハローワークの求人は3か月間有効ですが、その月に新たに受けつけた新規求人と新規求職者数のみの割合を示したのが「新規求人倍率」です。
企業が求人を出してから実際に就職が決まるまでには時間差があるため、有効求人倍率は雇用の先行指標と考えられます。しかし、失業率はコロナ禍前の2%台半ばから3.0%台近辺まで一旦上昇した後で2.5%近辺に戻っているのに対し、有効求人倍率はコロナ禍前の1.6倍台から1.05倍近辺まで悪化した後、現在も1.2倍台までの回復にとどまり、両者の動向が一致しなくなってきています。(図表1では有効求人倍率を逆目盛にしていることに注意)。
有効求人倍率のみで労働需給を分析するのは、もはや限界
2024年度の経済財政白書は、2010年代末以降に入職経路が多様化し、ハローワーク経由が減少する一方、(インターネット広告も含めた)民間職業紹介所経由の割合が増加していることを指摘しています。
そして、「労働需給の分析に際しては、ハローワークでの求人・求職状況のみを反映した有効求人倍率のみを用いることに限界が生じており、欠員率や民間職業紹介の求人など幅広い指標を総合的に確認していく必要があるといえる」と結論づけています。
日銀は「構造失業率」(景気変動とは関係ない、労働需給のミスマッチによる失業率)を計算する際に、従来は有効求人倍率を用いていましたが、「職業安定業務統計の有効求人数と民間媒体の求人数の乖離が大きくなった」ことを理由に、2026年3月に民間の求人も反映した手法を導入しました※。
これは経済統計全体にあてはまることですが、現実が変化すれば、見るべきデータも変わってきます。有効求人倍率はかつては日本経済の分析において非常に重要な指標でしたが、今では歴史的な使命を終えつつあるといえるでしょう。



