「米雇用統計」を世界の金融市場が最重要指標として注目する理由
●米雇用統計は金融市場にとっての最重要指標
●事業所調査は非農業部門雇用者数と平均時給が注目される
●家計調査は失業率の算出に用いられる
米雇用統計は、米労働省傘下にある米労働統計局(BLS)によって集計され、統計調査週(12日を含む週)の終了後、3番目の金曜日の米東部時間8時30分(米国が夏時間の場合、日本時間の21時30分、冬時間の場合は同22時30分)に発表されます。これは概ね毎月第1金曜日に当たりますが、調査週の関係で第2金曜日に持ち越されることもあります。
米雇用統計は世界の金融市場が注目する最重要指標です。その理由は主に3つあります。
第一に、月次のデータが基本的に翌月の第1金曜日に公表されるためです(詳細は後述)。ここまで速報性が高い経済指標は世界でも例がありません。
第二に、米国では個人消費のGDPに占める割合が約7割と他の国よりも高く、個人の所得環境(すなわち雇用と賃金)が経済に大きな影響を及ぼすためです。簡単にいえば、米国の雇用が改善すれば個人消費が拡大し、米国に輸出を行っている他の国々にも好影響を及ぼします。
第三に、雇用統計は米国の金融政策を直接的に左右するためです。米国の中央銀行である米連邦準備制度理事会(FRB)は(1)物価安定(stable prices)と(2)最大雇用(maximum employment)を目的とすることが法的に義務付けられています(二重の使命)。これは通常の中央銀行が物価安定を唯一の使命としていることとは大きな違いです。例えば、失業率の上昇はFRBの利下げに直結します。
令和のブラックマンデー、「植田ショック」より大きな要因
金融市場への影響を見るうえでの好例として、2024年8月2日に発表された米7月雇用統計の事例を振り返ってみましょう。
このときには失業率が前月の4.1%から2021年10月以来の高水準である4.3%へ上昇したことを受け、米国の長期金利と株価は急低下し、為替市場でも発表直前の1ドル=149円近辺から一時146.42円へと2.5円以上も円高・ドル安が進行しました。米10年債利回りも3.94%から3.79%へと0.2%弱低下し、米国の主要株式指数も軒並み急落しました。米財務省が発行する満期10年の米国債の市場で取引される利回りは、世界の長期金利の基準とされています。
さらに、その翌営業日の8月5日には、日経平均が前営業日比-4,451.28円と、1987年ブラックマンデー(-3,836.48 円)を上回る過去最大の下落幅を記録しました。日本では、この株安は日銀が7月31日に利上げを行ったことが理由だとして「植田ショック」とも呼ばれましたが、実際には米雇用統計の影響の方が大きかったのです。


