「これからは好きなことをする」39歳で会社を辞めた息子
「会社を辞めると聞いたときは、ずいぶん思い切ったことをするなと思いました」
そう話すのは、裕一さん(仮名・67歳)です。
一人息子の直樹さん(仮名・39歳)は、大学卒業後、IT関連企業で働いていました。30代半ばには年収900万円ほどになり、仕事は忙しかったものの、生活水準を大きく上げることはなかったといいます。
20代後半から投資信託などで積立投資を続け、賞与も一定額を投資へ。会社を辞めるころには、預貯金と金融資産を合わせて約6,800万円になっていました。
金融庁の資料によると、NISA口座数は2024年12月末時点で約2,559万口座に達し、30代は約449万口座でした。資産形成の手段として投資を利用する現役世代は少なくありません。
直樹さんが退職を考え始めたのは37歳のころです。残業が続くなか、「あと20年以上、同じように働くのだろうか」と考えるようになったといいます。
独身で、住宅ローンもありません。年間の生活費は200万円台に抑えていました。
「6,000万円を超えたあたりから、会社に行かなくても当面は暮らせるんじゃないかと思うようになりました。何かやりたいことがあったというより、まず会社を辞めたかったんです」
39歳になった春、退職しました。
父の裕一さんは心配しました。
「次は何をするんだ?」
そう尋ねると、直樹さんは「しばらく好きなことをするよ」と答えたそうです。
退職直後の生活は充実していました。
平日に旅行へ出かけ、映画をまとめて見て、以前から欲しかったパソコンも組み立てました。朝の満員電車も、仕事のメールもありません。
「最初の2ヵ月くらいは最高でした。日曜日の夜に憂うつにならなくていい。それだけでも辞めてよかったと思いました」
しかし、3ヵ月ほどすると生活が変わり始めます。
旅行から帰ってくれば、次の予定はありません。友人の多くは平日に働いています。
朝8時に起きる必要がないため、9時、10時と起床時間が遅くなりました。夜も「明日早いから寝よう」と考える必要がありません。
深夜まで動画やゲームを楽しみ、昼近くに起きる。そんな日が増えていきました。
直樹さんは「自由になったはずなのに、自由を持て余すようになった」と振り返ります。
