昼過ぎまで寝ていた息子…父が聞いた「毎日何してる?」
退職から半年ほど経ったころ、裕一さんは息子のマンションを訪ねました。午後1時過ぎに到着すると、直樹さんは起きて間もない様子でした。
「今起きたのか?」
「昨日寝たの、朝5時くらいだから」
部屋が荒れていたわけではありません。食事も自分で用意し、資産管理も続けています。
それでも裕一さんには、会社員だったころとの違いが大きく見えました。
「前は忙しすぎて心配していたんです。それが今度は、昼に起きて『今日は特に予定ない』と言う。本人は困っていないんでしょうけど、これがやりたかった生活なのかなと思いました」
父から「毎日何してるんだ?」と聞かれ、直樹さん自身も答えに詰まりました。
「会社員のころは、時間さえあればやりたいことはいくらでもあると思っていたんです。でも、時間が全部自分のものになると、意外とやらないんですよね」
内閣府『令和6年 人々のつながりに関する基礎調査』によると、孤独感が比較的高い人に、現在の孤独感に影響を与えたと思う出来事を尋ねたところ、「転校・転職・離職・退職(失業を除く)」を挙げた人は14.7%でした。「家族との死別」(24.6%)、「一人暮らし」(18.8%)に次いで3番目に多い結果です。
もちろん、会社を辞めることが孤独につながるとは限りません。ただ、仕事を離れることで、それまで当たり前にあった人との接点や外出する機会が減る人もいます。
直樹さんの場合も、つらかったのは「一人でいること」そのものではありませんでした。問題は、朝起きる理由も、決まった時間に外へ出る理由もなくなったことでした。
そこで、まず生活を組み直すことにしました。
平日は午前8時半までに起床。午前中は資格の勉強や運動に充て、週2回はコワーキングスペースへ行く。さらに、以前の仕事で身につけた知識を生かし、知人から依頼された仕事を月に数件だけ請け負うようになりました。
収入は会社員時代とは比べものになりません。それでも直樹さんは、むしろその程度が今は心地よいといいます。
「退職したことを後悔しているわけじゃないです。会社を辞めるためのお金は何年もかけて準備したのに、辞めた後に何をするかは『そのとき考えればいい』と思っていた。それが逆だったのかもしれません」
現在も6,800万円をすべて現金で保有しているわけではなく、金融資産には価格変動があります。資産を取り崩しながら生活する場合、運用成績や物価、税・社会保険料、将来の支出によって資産の持続期間も変わります。
そして、準備が必要なのはお金だけとも限りません。
仕事を辞めた翌朝に何時に起き、誰と会い、何をして一日を終えるのか。働かない自由を選ぶのであれば、その自由な時間をどう使いたいのかまで考えておくことも、その後の生活を組み立てるうえで大切になるでしょう。
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