(※写真はイメージです/PIXTA)

定年が近づくと、退職金や預貯金、年金などを確認し、これからの生活を思い描く夫婦もいるでしょう。十分な資金を準備できたと思っていても、その後の暮らしが想定どおりに続くとは限りません。長年、夫婦で老後を過ごすつもりだった63歳女性も、夫の定年を境に、それまで考えていた将来が大きく変わることになりました。

妻が初めて計算した「一人になったあとの生活」

預貯金、保険、自宅、退職金。専門家にも相談しながら整理を進めるなかで、美智子さんがもう一つ確認したのが年金でした。

 

「夫の年金で二人で暮らす、くらいにしか考えていなかったんです。自分がいくら受け取れるのか、ちゃんと見たこともありませんでした」

 

離婚した場合には、婚姻期間中の厚生年金記録を分割する「年金分割」の制度があります。

 

厚生労働省によると、当事者の合意や裁判所の決定による「合意分割」では、婚姻期間中の厚生年金の保険料納付記録について、分割後の割合を定めることができます。また、2008年4月以降の第3号被保険者期間については、一定の条件のもと、相手方の厚生年金記録を2分の1ずつに分割する「3号分割」の仕組みがあります。

 

ここで注意したいのは、夫が受け取る年金そのものを単純に半分にする制度ではないという点です。

 

美智子さんも年金分割を含め、自分が65歳以降に受け取る見込み額を確認しました。そして初めて、一人暮らしになった場合の家計を紙に書き出しました。

 

住居費、食費、水道光熱費、通信費、保険料。さらに医療費や家電の買い替えなど、毎月ではない支出も見込んでおきます。

 

「それまでは3,100万円という数字が大きく見えていたんです。でも離婚するなら、『夫婦でいくら持っているか』ではなくて、『自分がどんな生活をして、そのためにいくら必要なのか』を考えないといけない」

 

自宅をどちらが取得するのか、財産をどのように分けるのかについては、夫婦の話し合いが続いています。

 

美智子さんは当初、「離婚されたら老後のお金がなくなる」と思っていました。しかし、財産分与や年金分割について調べるにつれ、その認識も変わっていったといいます。

 

一方で、「半分もらえるなら安心」と単純に考えられるものでもありません。

 

現在63歳の美智子さんには、この先長い生活があります。厚生労働省『令和7年簡易生命表』でも、60代女性には平均して20年以上の余命があることが示されています。老後資金を考える際には、目の前にある資産額だけでなく、その資金で何年間、どのような生活を支えるのかという視点も欠かせません。

 

「離婚するかどうかとは別に、お金のことを知らなさすぎたと思います。夫がいくらもらって、貯金が全部でいくらある。それだけで安心していたんですよね」

 

離婚をする予定がなくても、夫婦のどちらか一方だけが家計や資産を把握している状態には注意が必要です。

 

預貯金や不動産などの資産、年金の見込み額、毎月の生活費をそれぞれが把握しておけば、離婚だけでなく、配偶者との死別や病気などで家計の形が変わった場合にも役立ちます。

 

「夫婦でいくらあるか」を知るだけでなく、「一人になった場合に何が残り、いくら必要なのか」まで確認しておくことも、長い老後に備える方法の一つといえるでしょう。

 

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