「お金を渡さなくなったから?」連絡が減って考えたこと
その後、千恵子さんが気になったのは、娘や孫からの連絡でした。
以前は誕生日が近づくと「今年は何が欲しい?」と千恵子さんから電話をかけ、そこから孫の学校生活や部活動の話を聞くことがよくありました。
入学前には制服姿の写真が送られてきたり、プレゼントを渡したあとには孫からお礼の電話がかかってきたりすることもありました。
しかし、お祝いをやめると、そうしたやり取りも自然と減りました。数ヵ月が過ぎたころ、千恵子さんはふと思ったといいます。
「私がお金を渡さなくなったから、連絡も来なくなったのかなって」
寂しさと同時に、「結局、お金を渡していたから孫とつながっていたのだろうか」という考えまで浮かびました。
ただ、しばらくして千恵子さんは、別のことにも気づきます。
これまでのやり取りの多くは、千恵子さん自身が「誕生日は何が欲しい?」「入学祝いは何がいい?」と連絡するところから始まっていました。お祝いをやめると決めたことで、その連絡まで自分からしなくなっていたのです。
「向こうから来なくなったと思っていたけど、私も電話していなかったんですよね。お金を渡さないなら、連絡する用事がないような気になっていたんです」
内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査』では、子や孫の生活費を「ほとんど負担している」人は6.6%、「一部を負担している」人は18.6%で、合わせて25.2%でした。また、今後優先的にお金を使いたいものとして「子や孫のための支出」を挙げた人も25.8%に上ります。
こうした数字には生活費や学費なども含まれており、誕生日や入学のお祝いだけを示すものではありません。それでも、子や孫への経済的な支出が高齢期の家計の一部になっている人が一定数いることは分かります。
千恵子さんはその後、娘に「今度みんなでご飯でも食べない?」と連絡しました。
久しぶりに会った孫たちは、以前と特に変わらない様子だったそうです。高校生の孫から部活動の話を聞き、小学生の孫とは最近好きになったゲームの話をしました。
現在も、高額なお祝いを再開するつもりはありません。その代わり、誕生日にはメッセージを送り、ときどき家族で食事をするようにしています。
年齢を重ねて収入の中心が年金になれば、これまで続けてきた子や孫への支出を同じ水準で維持することが難しくなる場合もあります。
家計に無理のない範囲を考えながら、お金を介さなくても続けられる付き合い方をつくっていくことも、家族との関係を長く保つ方法の一つといえるでしょう。
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