ひきこもりは「特別な家庭」の問題ではない
厚生労働省は、「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」で、ひきこもりを「社会的参加を避け、原則として6カ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態」と定義しています。
また、内閣府が2022年度(令和4年度)に実施し、2023年3月に公表した「こども・若者の意識と生活に関する調査」では、15~64歳のひきこもり状態にある人は推計146万人。およそ50人に1人とされています。
ひきこもりに至る経緯も、仕事や人間関係、病気、不登校、就職活動の失敗などさまざまです。また、長期化すればするほど、本人だけでなく親の高齢化も問題になります。
親が元気なうちは何とかなると思っていても、親の退職や病気、介護などをきっかけに一変することも。そのため、親が元気なうちに、本人の生活や将来について考えておく必要があります。
「恥ずかしいから」「人に知られたくないから」と問題を隠し続けることで、状況が変わらず長引く可能性も。たとえば、本人を無理に変えようとするのではなく、家族が支援機関などに相談し、現在の状況を整理することも一つの方法です。
夫婦が踏み出した一歩…きっかけは「勇気を振り絞ってかけた電話」
白い家の2階。その扉の向こうにいる息子のことを、誰にも知られたくなかった高橋さん夫婦。しかし、家族だけで抱え込んでいる間に、時間は確実に過ぎていきました。
転機になったのは、妻の美佐子さんが市の広報誌で「ひきこもり相談」の文字を見つけたことでした。
「最初は、息子本人が相談に行かなければ意味がないと思っていました。でも、家族だけでも相談できると知って……」
夫婦は何度も迷った末、自治体の相談窓口に電話をかけました。担当者にこれまでの経緯を話すと、責められることも、すぐに息子を外へ連れ出すよう求められることもありませんでした。
「むしろ『まずはご家族が相談することからで大丈夫です』と言ってもらえて、少し肩の荷が下りました」
長男本人は、まだ働いていません。それでも、これまで誰にも言えなかったことを第三者に話したことで、高橋さん夫婦の意識には少しずつ変化が生まれました。
「息子を何とか働かせなければ、と思っていました。でも、まずは今の状態を知って、できることから考えればいいんだと思えるようになりました」
もう一つ、相談をきっかけに始めたのが、長男の将来を見据えた家計の整理です。現在の生活費だけでなく、夫婦のどちらかが亡くなった場合、2人とも亡くなった場合まで想定し、資産をどの程度残せるのかを確認することにしました。
高橋さん夫婦にとって、自治体への電話は、長年隠し続けてきた問題と向き合うための、小さくても大きな一歩となったのです。
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