60歳で直面した「ローン危機」…夫婦喧嘩ばかりの毎日に
和彦さんが60歳で定年を迎えたとき、住宅ローンの残債はまだ約1,600万円強。繰上げ返済が思ったように進まず、娘の大学進学費用に貯金を使った一方で、受け取った退職金は約1,000万円でした。
退職金をすべて返済に充てれば残債は約600万円まで減らせます。しかし、それでは老後の手元資金が心もとない。結局、退職金には手をつけず、住宅ローンはそのまま残すことにしました。
そこからの返済は一層大変になりました。定年後、嘱託社員になったことで年収は現役時代の約580万円から330万円ほどにがくんと減少。さらに、妻も引き続きフルタイムで働く予定でしたが、親の介護などがあり、月4万円程度のパート収入しか得られなくなりました。
追い打ちをかけたのが、マンションの維持費。購入当初、管理費と修繕積立金は合わせて月1万6,000円ほどでした。しかし築年数の経過とともに引き上げられ、とうとう月3万円近くに。住宅ローンと合わせると、住居費は月12万5,000円を超えるように。
「収入が減り、住宅費は上がってしまった。」
住宅ローンの返済負担率について、住宅金融支援機構の2026年1月調査では「15%超~20%以内」が26.2%で最も多くなっています。和彦さん夫婦の返済負担率は購入当時16%ほどで、こうした水準と比べても決して高かったわけではありません。
しかし、現役時代の世帯年収を基準に「返せる」と判断してしまうと、定年後の収入減や維持費の上昇まで十分に織り込めない可能性があります。
家計が苦しくなるにつれ、夫婦の会話はお金のことばかりになっていきました。
「あなた、もう少し働けないの?」
「そもそもマンションが欲しいと言ったのは君だろ!」
62歳で、減ったとはいえ固定収入があるのに、それでも苦しい状況。65歳以降の収入がどうなるかわからず、それでも住宅ローンの返済が続くことを考えると、「この家に住み続けることが本当に正解なのか」という疑問が膨らんでいきました。
