「家を持たない老後も悪くない」2DKの団地で始めた生活
浩一さんが探したのは、新たに購入するマンションではなく賃貸住宅でした。
「また家を買ったら、結局その家を最後まで管理しなきゃいけないでしょう。老後はもっと身軽に暮らしたかったんです」
選んだのは、駅から徒歩10分ほどの場所にあるUR賃貸住宅の2DKでした。スーパーやドラッグストアも徒歩圏内にあり、家賃は共益費を含めて月6万円台です。
長年暮らした一戸建ては約2,100万円で売却。家の中にあった家具や荷物も、この機会に大幅に処分しました。
5LDKから2DKへの引っ越しで最も困ったのは、何を持っていくかを決めることでした。
「最初は全部いるような気がするんです。でも、食器棚なんて一人には大きすぎるし、客用の布団も何組もいらない。捨て始めたら、こんなに物を抱えていたのかと思いました」
引っ越して数週間は、戸建てとの違いにも戸惑いました。庭はなく、以前より収納も少なくなりました。月々の家賃も発生します。
それでも浩一さんが「楽になった」と感じたのは、休日でした。
以前なら晴れた日は庭を見て、「草を刈らないとな」と考えていました。台風のあとには屋根や雨どいも気になります。今はそうした心配をする必要がありません。
掃除も午前中だけで終わります。
「自分が管理しなきゃいけないものが減ったんです」
売却代金は引っ越し費用などを除き、老後資金として残しました。年金15万円から家賃を支払うため毎月の固定費は増えましたが、大規模な修繕費をいつ求められるか分からない不安はなくなったといいます。
子どもが泊まりに来るための部屋もありません。それでも、長女が遊びに来たときには近所で食事をし、長男一家が来る場合はホテルを利用してもらうことにしました。
「昔は、家を持っていることが安心だと思っていました。でも今の自分には、広い家を残しておくより、必要なものだけで暮らせるほうが気楽です」
持ち家と賃貸には、それぞれ異なる負担があります。賃貸なら家賃を払い続ける必要があり、年金生活ではその支出を長期的に見込んでおかなければなりません。一方、持ち家にも税金や設備交換、修繕などの費用が発生します。
子どもが独立し、世帯人数が変われば、現役時代に必要だった家が老後にも適しているとは限りません。今ある家を残すことだけを前提にせず、これから何を維持し、どこにお金や時間を使いたいのか。住まいの大きさを見直すことも、老後の暮らしを考える選択肢の一つといえるでしょう。
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