「夏までには家を決めて」半年後、夫婦が娘に伝えたこと
同居から半年ほどたったある土曜日、恵子さんと孝志さんは久しぶりに2人で昼食へ出かけました。帰りの車の中で、孝志さんがぽつりと「最近、疲れてないか」と尋ねました。
恵子さんは少し迷ってから、「夕飯を気にしないで出かけたい日もあるし、朝ゆっくりしたい日もある」と打ち明けます。
すると孝志さんも、「俺も4人で暮らすのが嫌なわけじゃない。でも、いつまでなのか分からないのが一番困る」と話しました。
娘や孫が嫌いになったわけではありません。
ただ、夫婦2人で暮らしていたころには、自分たちの都合だけで決められた食事や外出に、再び家族4人分の予定が入り込んでいました。
厚生労働省『令和6年 国民生活基礎調査』によると、65歳以上の人がいる世帯のうち「夫婦のみの世帯」は31.8%である一方、「三世代世帯」は6.3%です。1986年には44.8%を占めていた三世代世帯は大きく減少しており、高齢の親と子、孫が一つの世帯で暮らす形は以前ほど一般的ではなくなっています。
その日の夜、恵子さん夫婦は聡美さんに「夏までには新しい家を決めてほしい」と伝えました。
聡美さんは最初、「私たち、そんなに迷惑だった?」と戸惑った様子でした。恵子さんは、そうではないと説明しました。
「帰ってきてくれたのは嬉しかったよ。でも、お母さんたちも一度2人の生活になったでしょう。ずっと4人で暮らすつもりではなかったの」
聡美さんはしばらく黙っていましたが、「いつまでいていいのか、私もちゃんと聞けばよかったね」と答えました。
期限を決めてからは、聡美さんも本格的に住まいを探し始め、2ヵ月後、息子の学校から通える賃貸マンションへ転居しました。
再び夫婦2人になった最初の週末、恵子さんは朝食を済ませると、孝志さんと予定を決めずに外へ出ました。
「今日は夕飯、外で食べて帰ろうか」
以前なら、家にいる娘や孫の食事を考えていたところです。
もちろん、娘との関係が切れたわけではありません。聡美さんが仕事で遅くなる日に孫を預かることもありますが、「頼まれたら毎回引き受ける」のではなく、都合が合う日だけにしています。
娘と孫が戻ってきたときの喜びも、半年後に感じた負担も、どちらも恵子さんの本音でした。
家族を助けることと、自分たちの暮らしを守ることは必ずしも両立しないわけではありません。期限や役割を決めずに始めた同居を見直し、「必要なときには助ける。でも、それぞれの生活はそれぞれで持つ」という形に変えたことで、恵子さん夫婦は娘との距離を取り戻していったのです。
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