フィリピン自動車市場の現状と回復の兆し
フィリピン自動車市場は、高金利の長期化、燃料価格の高止まり、そして冷え込んだ消費者マインドの影響を受け、厳しい調整局面を余儀なくされてきました。
フィリピン自動車工業会(CAMPI)が集計する主要メーカーの販売データ(BYD等の非加盟ブランドを除く)を見ると、7月は前年同月比2.5%減、年初からの7ヶ月間(1-7月累計)では前年同期比10.2%減と、依然として前年を下回る苦しい数字が続いています。
しかし、足元の月次データに目を転じると、市場の様相は確実に変わりつつあります。CAMPI非加盟の主要プレーヤーであるBYDなどの推定販売数を加えた「広義の市場全体」で試算すると、7月の新車販売台数は約4万2,880台に達しました。これは前年同月比で約5%のプラスであり、単月としては今年最多の実績となります。
とりわけ注目すべきは、本年4月に記録した底からの回復スピードです。7月の市場全体ボリュームは4月の底から約31%も持ち直しており、購買需要がゆるやかに、しかし着実に正常化軌道へと戻りつつあることを強く示唆しています。
フィリピン市場において圧倒的なシェアを保持し続けるトヨタ自動車(現地法人トヨタ・モーター・フィリピン:TMP)は、同国の自動車産業を支える基幹企業です。
トヨタは首都マニラ近郊のラグナ州サンタローサ工場に大規模な生産拠点を構えており、主に以下の主力車種を現地生産(CKD組立)しています。
■ヴィオス(Vios)
フィリピンの国民的コンパクトセダン。政府の自動車産業育成政策(CARSプログラム)の対象車種でもあり、一般乗用車からタクシーやライドシェア車両まで幅広く活用されています。
■イノーバ(Innova)
東南アジア市場向けに開発された多目的車(MPV)。多人数乗車や荷物の積載性に優れ、フィリピンのファミリー層や法人需要を確実に取り込んでいます。
また、トヨタは全方位での電動化を掲げる「マルチ・パスウェイ・アプローチ(Multi-pathway approach)」をフィリピンでも展開しています。
■ハイブリッド車(HV)を軸とした電動化の普及
充電インフラが未発達なフィリピンの地域事情を踏まえ、既存のガソリンインフラで運用できるHV(プリウス、カローラ クロス、カムリ、アルファード等のHVモデル)を電動化推進の主軸に据えています。
■現地インフラに合わせた段階的電動車投入
インフラ整備の進展や市場需要の成熟度に応じて、PHEVやBEV(純電気自動車)を順次拡大していく現実的なロードマップを描いています。
■バリューチェーンと金融エコシステムの活用
販売金融(トヨタ・ファイナンシャル・サービス)などを通じ、購買ハードルを下げるソリューションを提供しながら、HVをはじめとする電動化車両の裾野を広げています。

