「会いたくないわけじゃない」娘に初めて断った日
「ごめん。これからは、用事のたびにそっちへ行くのは難しいかもしれない」
和子さんがそう伝えると、裕美さんはしばらく黙っていました。
「体調悪いの?」
「そうじゃないけど、往復4時間かけて行って、子どもたちを見て、また帰ってくるのが前より疲れるようになったの」
娘を責めたいわけではありませんでした。
そもそも、頼まれるたびに「大丈夫」と答えてきたのは和子さん自身です。裕美さんも、母親がそこまで負担に感じているとは知らなかったといいます。
「だったら、もっと早く言ってくれればよかったのに」
そう言われ、和子さんも「私も孫に会いたかったからね」と答えました。
話し合った結果、娘夫婦が仕事や用事のたびに和子さんを呼ぶことはやめました。
急な仕事のときは夫婦で予定を調整し、難しければ地域の一時預かりなども利用することにしました。和子さんが娘宅へ行くのは、基本的に自分が行きたいとき。娘一家が和子さん宅を訪ねる機会も増やすことにしました。
最初の週末、娘から頼まれごとのない土曜日を迎えた和子さんは、近所の友人と昼食へ出かけました。
午後、自宅へ戻ると裕美さんからビデオ通話がありました。画面に映った孫から、「ばぁば、今度はいつ来るの?」と聞かれます。
以前なら、その場で来週や再来週の予定を確認していたでしょう。
「夏休みの終わりごろかな。今度はみんなで遊ぼうね」
そう答えると、孫はあっさり「分かった」と笑いました。
家族を支えることと、自分自身の暮らしを大切にすることは、どちらか一方を選ぶ話ではありません。
和子さんも、これから孫の成長を見守りたいという気持ちは変わっていません。ただ、「頼まれたら行く」ことを当たり前にせず、無理のない頻度で会う。その距離に変えたことで、孫と過ごす時間を再び楽しみに待てるようになったといいます。
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