「家を持ち続ける安心」より夫婦が選んだもの
夫婦が探したのは、駅から徒歩10分以内の中古マンションでした。
新築にはこだわりません。スーパーと内科が歩いて行ける範囲にあり、エレベーターがあることを優先しました。
半年ほど探した末、築18年の2LDKを見つけました。現在の戸建てより狭くなりますが、夫婦二人なら十分です。
問題はお金でした。
戸建てを査定すると、土地の価値もあり約2,500万円で売却できる見込みでした。一方、購入を考えたマンションは諸費用を含め約2,300万円。大きく預貯金を取り崩さずに住み替えられる計算です。
ただ、由紀子さんが気になったのは管理費と修繕積立金でした。合わせて月約3万円かかります。
「今まで家賃ゼロだったのに、毎月3万円払うの?」
最初は抵抗がありました。
しかし誠一さんから、「戸建ても何も払わずに住めてたわけじゃないよ」と言われ、これまでの支出を書き出してみました。
固定資産税、火災保険、庭木の手入れ、設備の交換。そこに今後の外壁や屋根の修繕まで含めると、「持ち家だから住居費はほとんどかからない」と考えていたこと自体が、正確ではなかったと気づきました。
夫婦は戸建てを売却し、マンションへ移ることを決めました。
引っ越して最初に感じたのは、広さよりも管理する場所が減ったことでした。
使わない2階も庭もありません。給湯器など住戸内の設備については自分たちで考える必要がありますが、外壁や屋根、共用部分について個人で業者を探すことはなくなりました。
一方で、マンションなら将来も必ず安心というわけではありません。管理費や修繕積立金が上がる可能性があり、大規模修繕計画や管理組合の財政状況も確認する必要があります。
夫婦も購入前に長期修繕計画や積立金の状況を確認しました。
「戸建てが悪かったわけじゃないんです。子どもを育てた大事な家ですし、若いころは庭があることもうれしかった。でも、今の二人には必要なものが変わったんですよね」
国土交通省『令和5年住生活総合調査』でも、65歳以上の夫婦世帯が住み替えで重視する住宅の質として、段差などへの配慮や広さ・間取り、維持管理のしやすさなどが挙げられています。
高齢期の持ち家には、家賃を支払わなくていいという大きな利点があります。しかし、建物が古くなれば修繕費がかかり、年齢を重ねれば庭や階段など、以前は気にならなかった部分が負担になることもあります。
住まいの安心は、「家を持っているかどうか」だけでは決まりません。今後も無理なく管理できるのか、必要な費用を負担できるのか、生活に合った広さなのか。夫婦にとっては、そうした点を改めて考えたことが、一軒家を手放す決断につながりました。
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