「残念ですが、あなたは遺族年金の対象になりません」「え、なんで?」…夫婦で役割逆転、年収950万円妻を亡くした50歳専業主夫。年金事務所で突きつけられた“厳しすぎる現実”【CFPが解説】

「残念ですが、あなたは遺族年金の対象になりません」「え、なんで?」…夫婦で役割逆転、年収950万円妻を亡くした50歳専業主夫。年金事務所で突きつけられた“厳しすぎる現実”【CFPが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

今や「夫が家事や育児を担い、妻が働いて稼ぐ」という家庭も、珍しいものではなくなっています。しかし、こうした家族の形に追いついていなかったのが、公的年金制度。この事例の直樹さん(50歳)は、周囲に先駆けて“主夫”という生き方を選びましたが、妻の死をきっかけに思わぬ壁にぶつかることになりました。今回はこのような問題に対する遺族年金制度の仕組みや注意点、備えておきたい保障について、トータルマネーコンサルタント・CFPの新井智美氏が解説します。

「昔の家族像」を前提に作られた制度と、これからの変化

総務省「令和6年版働く女性の実情」によると、女性の就業率は25~54歳で8割近くまで上昇しており、共働き世帯が一般的になっています。こうした中、「妻が家計の中心」という家庭も、以前より珍しくなくなっています。

 

遺族年金制度は元々「夫が家計を支え、妻が扶養される」という前提で設計されていました。そのため、男性が遺族となる場合は受給要件が厳しく、「妻が大黒柱」の家庭ほど制度とのギャップを感じやすい状況が続いてきました。

 

しかし、社会の変化に追いついていなかった制度が、いま変わろうとしています。2025年に成立した年金制度改正法では、遺族厚生年金の男女差を解消する見直しが盛り込まれ、2028年4月から施行される予定です。

 

現在は、子どものいない夫の場合、妻が亡くなった時点で55歳以上でなければ遺族厚生年金の対象にならず、受給できる場合でも原則60歳からとなっています。これに対して改正後は、18歳到達年度末までの子どもを養育していない60歳未満の配偶者について、男女共通で原則5年間の遺族厚生年金が支給される仕組みに変わります。

 

つまり、直樹さんのように50歳で妻を亡くした男性も、改正後の制度であれば、原則として5年間の給付を受けられる可能性があります。

 

さらに、5年間の給付が終わった後も、所得が十分でない場合や障害年金を受給している場合など、一定の配慮が必要な人については、最長65歳まで給付が継続されます。また、これまで設けられていた有期給付の収入要件(年収850万円未満)も廃止される予定です。

 

一方で、今回の改正がすべての遺族に一律に適用されるわけではありません。60歳以上で死別した人や、18歳到達年度末までの子どもを養育している間の給付、改正前から遺族厚生年金を受給している人などは、基本的に今回の見直しの影響を受けません。また、女性については、2028年4月から20年程度をかけて段階的に見直されることになっています。

 

したがって、今回の直樹さんのケースでは「現在なら受給できない」という結論は変わりませんが、制度改正後に同じ年齢・家族構成で妻を亡くした場合には、原則5年間の遺族厚生年金を受け取れる可能性があります。

 

家族の働き方が変化するなか、遺族年金も少しずつ「夫が働き、妻が扶養される」という従来の家族像から、男女を問わず家計を支える人を保障する仕組みへと変わりつつあります。

次ページ専門家の視点|「共働き」だけでなく「主夫・主婦家庭」こそ保障の見直しを

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