※写真はイメージです/PIXTA

食材費や光熱費の高騰、人手不足に伴う賃上げ――。飲食業界を襲う空前のコスト高の中、2026年上半期の飲食店倒産件数は過去最多の473件に達した。しかしその陰で、M&A(企業の合併・買収)件数が前年同期比で約3割増となる62件へと急増。かつての「敗戦処理」から、企業価値を高めて事業を繋ぐ「戦略的売却」へ。激変する飲食業界の最前線で今、何が起きているのか。最新データからその真相を紐解く。

物価高と倒産急増で加速する飲食M&A

飲食業界のM&Aの動きが加速している。2026年1~6月のM&A件数は、過去最多を記録した2025年同期(1~6月)の実績を大幅に上回った。食料品などの物価上昇が続く中、業界内の競争が激化し、飲食店の倒産件数も過去最多ペースで推移している。

 

飲食業界にとっては経営基盤の強化が急務となっており、各社は戦略的なM&Aを通じて資本力を高めるほか、規模のメリットを活かした生き残りを図っている。

1~6月期の飲食業M&Aは3割増の62件

2026年1~6月期の飲食業界のM&A件数は62件となり、前年同期から29.1%増加した。物価高や原材料高が顕著になる中、業界内の競争が一段と激しくなり、事業基盤を強化するための合従連衡が起きやすくなっている。2025年同期を大きく超えるペースで推移しており、2026年もさらなる増加傾向が続いていることが鮮明となった。

 

飲食業界のM&Aを仲介するM&Aプロパティーズ(東京・新宿)が、全上場企業に義務づけられた適時開示情報などから集計した。飲食を伴う店舗型ビジネスを「飲食業界」と定義し、同業界のM&A件数を計算している。

1~6月期の飲食業M&Aは戦略的売却・買収が半数

1~6月期のM&A(62件)のうち、事業の選択と集中で生産性を向上させる「戦略的売却型」が半数を占める31件に達した。物価高で原価が上昇する中、事業の競争力や効率性を高めようとする経営者が増えている。次に多かったのは「事業承継型」の22件で、「ファンド売却型」は6件、「業務資本提携・経営統合型」は2件にとどまった。

 

飲食業の経営者らが生産性改善に向けたM&Aを検討する背景には、業界が置かれた厳しい経済環境がある。帝国データバンクによると、2026年1~6月期の飲食店の倒産は473件に達し、前年同期(458件)を上回り過去最多を更新した。

 

総務省が公表した6月の消費者物価指数では、食料品(生鮮品を除く)と生鮮品がいずれも前年同月比3%を超える上昇となった。飲食業界は食材・光熱費の高騰や賃上げなどで利益が圧迫されており、資本力が弱く、急速に進む環境変化に対応できない飲食店の淘汰が進みつつある。

 

特に居酒屋を主体とする「酒場・ビヤホール」や「中華・東洋料理店」の倒産は過去最多を更新した。経営環境が一段と厳しさを増す中、生き残りのためには資本・経営基盤の強化が不可欠だ。資本力の強い大企業やチェーン店と中小企業とのM&Aを通じた合従連衡は、今後も加速しそうだ。

 

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※本連載は、ジャーナリスト・日高広太郎氏編集協力のもと作成しております。

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