「飲食・旅行・観劇・治療・寄付」はお金をつかったことになる
会計学で考えると、「お金をつかったことになる」のは、かたちの残らないことにお金を支出した場合に限られるのです。たとえば、「飲食・旅行・観劇・治療・寄付」といった、いわゆる「コト消費」系です。
それとは異なる、いわゆる「モノ消費」系のものにお金をつかった場合は、支出した瞬間には、実質的には、お金はつかっていなくて、他の資産のかたちで価値は残っています。そして、価値が目減りした分(この「価値の目減り」のことを「減価償却」と言います)だけを「お金をつかった」と考えるのです。
このように、お金をつかって、何かを買った場合、その買ったモノが「資産」であれば、本質的には「お金をつかったこと」にはならないのです。
それは、金額の多寡には関係ありません。3億円の一戸建ての家だろうと、300万円の車だろうと、30万円の腕時計だろうと同じです(勘定科目では、車は「車両運搬具」で、腕時計は「什器・備品」です)。
なお、「資産であれば」というのはすでに述べましたが、「売ればお金になるモノは全て資産である」と考えておけばいいでしょう。
ですから、むしろ留意すべきことは、「支出した金額」ではなくて、「リセール・バリュー(売ったらいくらになるのかの価値)」と「売る時期」です。
3億円の一戸建ての家を買っても、10年後に、もしそれが3億円で売れるのであれば、それは名目的には「1円もつかっていない」のです。「名目的には」というのは、「見た目の数字上は」という意味です。「名目的」の反対語は「実質的」で、金利やインフレ分を加味するのが「実質的な」判断です。
もちろん、その間の借入金の金利、固定資産税、その他の維持・管理費には、お金をつかうことになります(これらの支出は、形の残らないものに対する支出なので、「お金をつかって」います)。
しかし、これらの支出は「維持費」なので、いわゆる生活コストですし、ここで問題にしている「3億円の居宅」については、やはり「資産の種類の変更」でしかないのです。
この感覚を身に付けてしまえば、どんな大きな買い物をしても、「大金をつかってしまった!」という嫌悪感は一切持たずにすみます。
榊原 正幸
元・大学教授/会計学博士/税理士
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