今回は、海外在住の外国人を採用し、日本に呼び寄せて就業させるための手続きの流れを見ていきます。※本連載は、至誠法務労務サポート代表、社会保険労務士、行政書士の井出誠氏が、経営者が外国人を雇用する際の基礎知識を解説します。

ビザの申請から入国までは、数ヵ月単位の時間が必要

外国人の採用を考えた場合、日本在住の外国人を採用するのか、海外在住の外国人を採用するのかによって、手続きの方法や手間の量は変わってきます。

 

日本に在留している外国人(例えば留学生や就労者)を採用する場合、その人が既に日本にいるわけですから、ご本人との打ち合わせやヒアリング、書類収集の依頼等も容易です。それに対して、海外に住んでいる外国人の場合は、メールや電話、郵送などの手段を使って入管手続きの準備を進めていくわけですが、やはり距離的又は時差などの関係で手間が多少増えることは致し方ないでしょう。

 

さて、会社が海外在住の外国人を採用し、その外国人を日本に呼び寄せる場合の手続きについてのご質問を多くいただきます。以下で基本的な流れを確認していきたいと思います。

 

外国人が日本に入国しようとした場合、その外国人は、外国にある日本の大使館や領事館(以下、在外公館)へ出向き、査証(ビザ)の発給申請を行い、ビザを取得する必要があります。(査証免除国についてはここでは省きます)。日本で就労するためには、まず就労のビザを得たうえで、上陸手続に進む必要があるわけです。

 

通常、在外公館へビザの発給申請を行いますと、その在外公館のみで審査が行われるわけでなく、

 

 在外公館→外務省→法務省→地方入国管理局→法務省→外務省→在外公館

 

という流れをたどって本国への照会や審査等が行われますので、非常に時間がかかります。

 

内定が出た後、ビザを申請してから日本に入国するまで、順調にいっても数ヵ月かかってしまいますので、会社の採用計画にも狂いが生じてしまうかもしれません。外国人本人もこの数ヵ月間は待ちぼうけの状態となってしまいます。

ビザの早期発給を可能にする「在留資格認定証明書」

この手続きに関して、その迅速化を図るため、「在留資格認定証明書制度」があることを覚えておくとよいでしょう。

 

在留資格認定証明書制度とは、日本国内において、その外国人が行おうとする活動が上陸のための条件に適合しているかどうかについての、事前に審査を受けることができる制度です。

 

就労の場合は、雇入れる会社の代表者等が代理人となり地方入国管理局に申請します。入国管理局における事前審査の結果、当該条件に適合すると認められる場合は、「在留資格認定証明書」が交付されますので、この証明書を外国人のもとへ郵送します。当該外国人は、この「在留資格認定証明書」を提示して在外公館でビザの申請行うという流れになります。

 

この証明書が交付されている場合は、本国での審査が終わっていますので、前記のように【在外公館→外務省→法務省→地方入国管理局→法務省→外務省→在外公館】という流れをたどらず、その在外公館のみで処理されるため、ビザの早期発給が期待できるというわけです。早ければ数日でビザが取得できますので、ビザ申請から数日で日本に旅立てることになります。海外からの呼び寄せのケースではこの進め方が一般的です。

 

ただし、在留資格認定証明書が交付されていれば100%ビザが発給されるのかといわれるとそうではありません。

 

在留資格認定証明書は、ビザの発給を保証するものではなく、あくまで入国審査手続の簡易迅速化と効率化を図ることを目的として行われている制度ですので、当然、ビザ審査の過程で発給基準を満たさないことが判明した場合には、在留資格認定証明書が交付されていてもビザが発給されない場合もありますので、ご注意ください。

本連載は書下ろしです。原稿内容は掲載時の法律に基づいて執筆されています。

※外国人就労ビザ相談センター八王子
http://www.visa802.com/

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