「何も残らない」と思っていたが…財産や年金を確認すると
相談を始めてから、恵美さんは夫婦の財産を一つずつ確認しました。
正志さんが受け取った退職金は、生活費や自宅の修繕などに使った分を除いて約2,700万円が残っていました。このほか夫婦の預貯金と、住宅ローンを完済した自宅があります。
「最初は、家も預金も夫の名義だから、私はほとんど何も持たずに出ていくんだと思っていました」
しかし専業主婦だったからといって、婚姻中に形成した財産への貢献が否定されるわけではありません。
話し合いは数ヵ月に及びました。最終的には、預貯金や退職金の残額、自宅の評価額などを確認したうえで財産を分け、恵美さんは離婚後の住居費を含めた生活資金を確保する方向で合意しました。
さらに確認したのが年金です。
日本年金機構によると、離婚時の年金分割では、婚姻期間中の厚生年金記録を一定の割合で分割できる「合意分割制度」があります。また、2008年4月1日以降の第3号被保険者期間については、一定の要件を満たせば、相手方の厚生年金記録を2分の1ずつ分割する「3号分割制度」があります。年金そのものを単純に半分にする制度ではない点には注意が必要です。
恵美さんも年金事務所で自身の記録と見込み額を確認し、財産分与で受け取る資金と合わせて、毎月いくらまでなら使えるのかを計算しました。
内閣府『令和7年版高齢社会白書』では、2025年には65歳以上人口に占める一人暮らしの割合が男性18.3%、女性25.4%と推計されています。高齢期に一人で暮らすことは、決して珍しいものではなくなりつつあります。
離婚を切り出されてから半年。恵美さんはまだ離婚後の住まいを探している途中です。
「最初は『35年間家にいた私には何もない』と思っていました。でも、まず何が自分の生活に必要なのか、何を確認しなければいけないのかが分かってきました」
突然の離婚話そのものへの戸惑いが消えたわけではありません。それでも恵美さんは、夫の提示した条件をそのまま受け入れるのではなく、財産や年金を確認しながら、離婚後の生活を具体的に考え始めています。
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