従来の「自筆証書遺言」や「公正証書遺言」との比較
相続の実務に携わっていない限り、遺言に触れる機会は多くないかもしれません。
遺言のなかでもっともポピュラーと言えるのが、遺言者が実際に遺言を書く「自筆証書遺言」です。自筆証書遺言は、財産目録を除き、遺言者が遺言全文を自ら書き、押印しなければなりません。
そのため、記載内容が多い場合は時間がかかりますし、書き損じが生じることもあります。実際に遺言を書いてみると分かりますが、何回も書き直す羽目になることもしばしば……。しかも、訂正する際は民法で決まった方式によって訂正しなければならず、意外に煩雑です。
令和2年2月から、自らが書いた遺言を法務局(遺言保管所)において保管してもらう自筆証書遺言保管制度が始まりました。しかし、保管してもらう遺言は先ほどの自筆証書遺言と同じなので、財産目録を除き、遺言者が遺言全文を自ら書いた上で押印しなければなりません。
その点、公証役場で公証人に遺言を作成してもらう公正証書遺言だと、先に述べたデメリットはなく、正確な遺言を安心して作成してもらえます。ただし、費用や時間がかかってしまいます。
PCやスマートフォンで作成できる「デジタル遺言制度」が導入
令和8年6月17日に改正民法が参議院で可決され、パソコンやスマートフォンで作成した自筆証書遺言を法務局で保管する「保管証書遺言(いわゆるデジタル遺言制度)」が導入されることになりました。この制度は、今後3年以内に施行されます。
これにより、今後はパソコンやスマートフォンで遺言が作成できるようになるほか、オンラインでの保管申請も可能になります。
法務局への手続きはWeb会議でもOK。家庭裁判所の検認も不要
このデジタル遺言制度を利用する場合は、遺言者の真意を確認するために、法務局の担当者(遺言書保管官)の面前で書いた遺言の内容を口頭で読み上げる(口述)必要があります。この口述手続きはWeb会議で行うことも可能です。
デジタル遺言制度は、作成された自筆証書遺言が有効なものであるかどうかなどの問題は残りそうですが、自筆証書遺言の作成の手間が省けますし、それを国の機関で保管してもらえることはメリットです。また、この制度を利用した場合は、相続開始後に家庭裁判所の検認を経る必要もなくなります。何より、遺言を作成する手段が増えることは好ましいことです。
他方、パソコンやスマートフォンの使用に慣れていないという方は、従前の自筆証書遺言制度を活用することになるでしょう。
