投資家保護に配慮した"優遇構造"…「変動10年」が選ばれ続ける本当の理由
変動10年の利率は、直前の10年固定利付国債入札の平均落札利回りを基準金利とし、それに0.66を乗じた値が半年ごとに見直される。長期金利連動の設計であるため日銀の政策変更が波及するにつれ適用利率も切り上がる。
令和8年6月募集分の適用利率1.74%は、同じく国が発行する6ヵ月物国庫短期証券(約1.0%)を大幅に上回っており、元本保証を加味すれば経済合理性があるといえるだろう。
中途換金の仕組みも重要だ。変動10年・固定5年・固定3年のいずれも発行後1年経過すれば額面で換金でき、差し引かれるのは直前2回分の各利子(税引後)相当額のみだ。
変動10年は半年ごとの利率見直しにより金利変動による価格下落リスクが大幅に低減されており、中途換金では額面買取のため価格変動リスクは実質的に顕在化しない。固定型においてこそこの仕組みはより本質的な価値を持つ。
購入後に金利が上昇しても元本が額面で戻るという保護は、通常の債券市場にはない特殊な設計だ。財務省が個人投資家のために意図的に設計した、投資家保護に配慮した制度といえる。
購入手数料はゼロ…金融機関が「個人向け国債」を販売する戦略的な意義
購入時手数料はゼロだが、財務省の開示資料によれば取扱手数料は額面100円あたり変動10年14銭(0.14%)、固定5年11銭(0.11%)、固定3年8銭(0.08%)、さらに保有残高の0.02%(年率)が管理手数料として支払われる。
手数料率は低いが、対面・オンラインを問わず安全志向の顧客との接点を作るドアオープナーとして、また日銀が国債購入を減らすなかで個人投資家を新たな国債の買い手へつなぐ橋渡し役として、金融機関にとり一定の戦略的意義があるのではないだろうか。

