(※写真はイメージです/PIXTA)

会社を辞め、資産運用の収益で暮らす「FIRE(Financial Independence, Retire Early)」に憧れる人は少なくありません。特に近年は、都市部を離れて地方へ移住し、生活コストを抑えながら自由な時間を楽しむライフスタイルが注目されています。しかし、資産が十分にあったとしても、実際にその生活が自分に合うとは限りません。お金では解決できない問題に直面し、当初描いていた理想との違いに気付く人もいます。

「もう会社には戻らない」…資産1億円を築き、地方移住を決断

浩一さん(仮名・55歳)は、大手メーカーで働きながら20年以上にわたって資産形成を続けてきました。共働き世帯だったことに加え、若い頃から投資信託や株式への積立投資を継続していたこともあり、50代半ばで金融資産は約1億円に達していました。

 

住宅ローンも完済済み。子どもも独立しています。

 

「ここまで来たら、もう十分じゃないかと思ったんです」

 

当時の浩一さんは、毎日の通勤や会議、人間関係に疲れを感じていました。働くことそのものが嫌になったわけではありません。しかし、残りの人生を会社中心に過ごすことへの疑問が強くなっていたのです。

 

そんなときに目にしたのが、FIREに関する情報でした。

 

資産収入を活用しながら自由に暮らす人々。地方へ移住し、自然の中でゆったり生活する夫婦。浩一さんは次第に、「自分もこういう暮らしがしたかったのかもしれない」と考えるようになります。

 

妻の美和さん(仮名・53歳)も反対しませんでした。

 

夫婦で話し合った結果、浩一さんは55歳で退職。都内の自宅マンションを売却し、温暖な気候で知られる地方都市へ移住しました。

 

移住先では中古住宅を購入し、家庭菜園も始めました。満員電車はなく、海や山も近い環境です。

 

「毎日が休暇みたいでした」

 

朝は散歩をし、昼は読書や投資の勉強をする。平日に混雑を避けて旅行へ出かけることもできました。

 

当初は理想そのものの生活でした。

 

金融庁『つみたてNISA早わかりガイドブック』でも、長期・積立・分散投資の重要性と長期的な資産形成の有効性が示されています。浩一さんも長年の積立投資によって十分な資産を築いており、生活費にも特段の不安はありませんでした。

ところが、移住から2年ほど経った頃から少しずつ違和感を覚えるようになります。最初は平日の昼間でした。

 

会社員時代は忙しくて会えなかった友人たちも、当然ながら平日は働いています。地域に知人はほとんどおらず、日中に会話をする相手が妻以外ほとんどいない日もありました。

 

さらに、仕事を通じて得られていた達成感や緊張感もなくなっていました。

 

「自由になりたかったはずなのに、毎日同じことの繰り返しに感じるようになったんです」

 

美和さんも同じような感覚を抱いていました。

 

移住当初は新鮮だった生活も、数年が経つと日常になります。都会にいた頃の友人とは疎遠になり、気軽に会うことも難しくなりました。

 

夫婦は次第に、「この生活をあと20年続けたいだろうか」と考えるようになります。

 

 

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