(※写真はイメージです/PIXTA)

お金の話は、親子であっても踏み込みにくいものです。医療費、住居費、近所付き合い、借入れ、親族への支援など、本人が隠している支出が積み重なり、亡くなったあとに初めて実態が分かることもあります。

遺品整理で見つかった通帳と督促状…父の「我慢」が発覚

父の死後、拓也さんは実家の片付けのため、週末ごとに家へ通いました。古い衣類、母の遺品、使わなくなった家電。少しずつ整理を進めるなか、押し入れの奥から封筒の束が見つかりました。

 

中に入っていたのは、通帳、医療費の領収書、カードローンの明細、そして公共料金の督促状でした。

 

「最初は何かの間違いだと思いました。父はずっと『足りている』と言っていたので、借金があるなんて想像もしていませんでした」

 

通帳を見ると、年金が入るたびに生活費や医療費の支払いで残高が減り、拓也さんからの仕送りも数日以内に引き落とされていました。さらに、家の雨漏り修理や給湯器交換の費用を一括で払えず、カードローンで補っていた時期があったことも分かりました。

 

借入額は大きくはありませんでしたが、利息を払いながら少しずつ返済していたため、家計は常にぎりぎりでした。督促状の中には、支払いが遅れた国民健康保険料や介護保険料に関する通知もありました。

 

昭夫さんは、仕送りを無駄遣いしていたわけではありません。むしろ、拓也さんに心配をかけまいとして、足りない分を一人で抱え込んでいたのです。

 

内閣府『令和7年版高齢社会白書』によると、2025年時点で、65歳以上人口に占める一人暮らしの割合は男性18.3%、女性25.4%と推計されています。一人暮らしの高齢者が増えるなか、家計や健康状態の変化を家族が把握しにくい状況は珍しくありません。

 

相続の場面では、預貯金や不動産だけでなく、借金などの債務も相続の対象になります。民法では、相続人は原則として被相続人の財産上の権利義務を承継します。ただし、負債が多い場合には、家庭裁判所での手続きを経て相続放棄を選ぶこともできます。相続放棄は、原則として相続の開始を知った時から3ヵ月以内に行う必要があるため、遺品整理や通帳確認を後回しにすると判断が遅れるおそれがあります。

 

拓也さんの場合、父の借入額は相続放棄を検討するほど大きくはありませんでした。しかし、事実を知ったときの衝撃は大きかったといいます。

 

「もっと早く聞いていれば、違う形で助けられたかもしれません」

 

その後、拓也さんは実家を処分し、父の借入れを清算しました。遺品のなかには、拓也さんからの仕送りが振り込まれた通帳を大切に保管していた形跡もありました。

 

親のお金の問題は、切り出し方が難しいものです。毎月の収支、医療費、保険料、家の修繕費、借入れの有無。すべてを一度に聞き出す必要はありませんが、元気なうちから少しずつ確認しておくことは、親の尊厳を守ることにもつながります。

 

お金を渡すだけでなく、家計の見通しや困りごとを一緒に確認する。その一歩が、親子双方の後悔を減らすことにつながるのかもしれません。

 

 

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