(※写真はイメージです/PIXTA)

お金の話は、親子であっても踏み込みにくいものです。医療費、住居費、近所付き合い、借入れ、親族への支援など、本人が隠している支出が積み重なり、亡くなったあとに初めて実態が分かることもあります。

毎月3万円の仕送りを受け取り続けた父

昭夫さんは70歳まで嘱託社員として働き、その後は年金暮らしに入りました。妻はすでに亡くなっています。

 

息子の拓也さん(仮名・47歳)は結婚して別の地域に住んでおり、妻と中学生の子どもを抱える身でしたが、父の一人暮らしを心配し、65歳を過ぎた頃から毎月3万円を仕送りするようになりました。

 

「最初は受け取らないと言っていたんです。でも、固定資産税や家の修理もあるだろうと思って、こちらから続ける形にしました」

 

仕送りは8年続きました。合計すれば約288万円です。決して小さな金額ではありませんでしたが、拓也さんは「父の生活を少しでも楽にできているなら」と考えていました。

 

昭夫さんは、電話ではいつも同じように答えました。

 

「年金もあるし、お前からも送ってもらっている。十分だよ」

 

実際、父の暮らしぶりは派手ではありませんでした。旅行に頻繁に行くわけでもなく、外食も少ない。帰省したときも、冷蔵庫には簡単な食材があり、家の中もそれなりに片付いていました。拓也さんは、父が慎ましく暮らしているのだと思っていました。

 

総務省『家計調査(2025年)』によると、65歳以上の単身無職世帯では、可処分所得約11.9万円に対し、消費支出は約14.9万円となっており、平均では毎月約3万円の不足が生じています。もちろん家計は住居費や地域、健康状態によって大きく異なりますが、年金だけで余裕を持って暮らせるとは限りません。

 

それでも昭夫さんは、家計の詳しい内訳を話そうとはしませんでした。拓也さんが「足りないなら言って」と伝えても、父は決まって笑いました。

 

「親が子どもに金の心配をさせるもんじゃない」

 

その言葉に、拓也さんもそれ以上は踏み込めませんでした。父のプライドを傷つけたくなかったこともあります。自分にも住宅ローンと教育費があり、正直なところ、月3万円の仕送りを続けるだけで精いっぱいでもありました。

 

ところが、昭夫さんが急な病気により73歳で亡くなったあと、遺品整理を進めるなかで、拓也さんは父の暮らしが思っていたものと違っていたことを知ります。

 

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