地政学的な緊張が高まると、金の価格が上昇する
多くの商品が高値をつけていない中、例外は貴金属である。特に金(ゴールド)は2024年から2025年にかけて、ロシア市場を除けばほぼ世界中で過去最高値を記録した。これは、金が「安全資産」として買われていることの裏返しでもある。
世界における地政学的な緊張が高まると、金の価値が上昇するのはごく自然な流れだ。歴史を振り返れば、戦争や通貨危機、経済不安が起こるたびに、金は「投資資産」として買われてきた。実際のところ、金の価格はすでに過去最高水準にある。2025年に入ってから著しく上昇し、10月には、1オンスあたり約4,381ドルという史上最高値を記録。市場には熱狂の空気が漂っていた。
価格上昇の背景には、世界的なインフレ懸念や債務拡大に対する不信感、そして通貨価値への疑念があったことは言うまでもないだろう。さらに、FRBによる利下げへの期待も、金を魅力的にする大きな要因となる。低金利・低実質利率の環境は、金の価値を相対的に高め、投資家を引き寄せるのだ。
また、地政学的リスクや市場の不透明性も、安全資産としての金需要を後押しする。加えて、多くの中央銀行が金を保有資産として買い増ししてきたことも、上支えとなった。要するに、金は常に買われる環境にあったのだ。
金価格が史上最高値を記録した直後、反動で金を手放す人が続出
しかし、このような買いの流れは、同時に反動による下落のリスクをはらんでいる。
2025年10月21日、金価格は前日比で約5.5%下落し、過去10年で最大の一日下落幅を記録。この急落の背景には、いくつかの複合的な要因が存在する。
まず、史上最高値を記録した直後、多くの投資家が利益を確定させる動きに出たこと。
急騰のスピードがあまりに速かったために警戒感が高まり、買い手は慎重にならざるを得なかったのである。金はドル建て資産であるため、ドルが強くなると相対的に割高となる。この日、ドル相場が上昇したことで、金を保有するコストが増大し、安全資産としての魅力が一時的に低下。
また、地政学リスクの一部が緩和されたことも、投資家のリスク選好を促し、金から資金が流出する一因となった。そのうえ、価格が短期間で急騰したことによる技術的な過熱感も影響。テクニカルな調整が必要な価格水準に達したということだ。さらに、インドの金購入シーズンが終盤に差し掛かり、需要がひと息ついたことも下落の一因となった。
極めつきは、アメリカの経済指標や債務動向に対する不透明感が投資家心理に影響し、リスク回避の売りを誘発。総合すると、急上昇した金価格は反動を余儀なくされ、利益確定売りとドル反発、安全資産離れの流れが一気に市場を押し下げたのである。
