資産性よりも大きかった、「日々の安心」
翔一さん夫婦が住み替え後に強く感じたのは、建物管理の安心感でした。以前の賃貸では、共用部の清掃状況や宅配物の受け取り、防犯面に小さな不満がありました。現在のマンションでは管理人が常駐し、共用部も整えられています。
「子どもが一人で帰ってくる日も、以前より不安が少なくなりました」
美咲さんはそう話します。もちろん、タワーマンションだから絶対に安全というわけではありません。ただ、オートロックや防犯カメラ、管理体制が整っていることは、共働き世帯にとって大きな安心材料でした。
また、防災面への意識も変わりました。高層階ならではの停電時の不便やエレベーター停止のリスクはあります。その一方で、マンション全体で防災備蓄や非常用設備について説明を受けたことで、夫婦は自宅の備えを見直すようになりました。
国土交通省『住生活基本計画(全国計画)』では、住宅の安全性や高齢者・子育て世帯が安心して暮らせる住環境の確保が課題として示されています。住まいは単なる資産ではなく、日々の暮らしを支える基盤でもあります。
もちろん、タワーマンション購入には注意点もあります。管理費や修繕積立金は将来上がる可能性があり、住宅ローンに加えて固定資産税もかかります。資産価値が維持されるとは限らず、売却したいときに希望価格で売れる保証もありません。
翔一さん夫婦も、購入を「得だった」と単純には考えていません。
「広い家に住むより、時間に余裕ができる家を選んだという感覚です」
その言葉どおり、夫婦にとっての価値は価格上昇ではなく、毎日の生活が回りやすくなったことでした。
タワーマンションは、誰にとっても正解ではありません。収入、家族構成、勤務先、教育方針、将来の支出によって向き不向きがあります。ただ、住居費だけを見て高いか安いかを判断すると、通勤時間や家事負担、防犯、管理といった見えにくい価値を見落とすこともあります。
翔一さん夫婦にとってタワマン購入は、背伸びの買い物ではありませんでした。共働きの時間と安心を守るために、住まいの優先順位を見直した結果だったのです。
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