投資を始めてから知った不動産投資のリスク
しかし、Aさんを待ち受けていたのは過酷な現実でした。
このスキームは「常に借主がいること」が大前提となっています。借主が見つからなければ、毎月のローン返済はAさんの給料や貯蓄から持ち出さなければなりません。このように、借主が決まらないかもしれないというリスクを「空室リスク」といいます。毎月の赤字補填に耐え切れなくなれば、不動産を売却する事態に追い込まれてしまうでしょう。
また、不動産市場の未来を正確に予測することはプロでも困難です。Aさんが手放そうとしたとき、購入時より価格が下がっていれば、売却益が残るかはわかりません。
そのうえ、勧誘の決め手になった「節税」についても大きな落とし穴がありました。日本の税制度は複雑に入り組んでおり、なんでも経費にできるわけではありません。思ったほどの節税効果が得られず、逆に保有している現金が減っていく可能性もあります。
つまり、空室リスク、節税リスクだけをとっても、不動産投資には見通せない部分があり、リスクを完全に排除することが難しい側面があるのです。
最近は、こうしたリスクを意図的に隠して契約を迫ったり、市場価値の低い二束三文の物件を高く売りつけたりする悪徳業者の存在が報告されています。
「こんなはずじゃなかった」と後悔したとき、弁護士ができること
実際に不動産投資を始めてリスクに直面し、「こんなはずではなかった!」と思うことがあるかもしれません。
当初思い描いたものと違ったというだけで、不動産投資を勧めてきた業者に、すべての損害を請求できるわけではないのが現実です。
リスクがある以上、業者には、投資をするか否かの判断に影響をおよぼすような事柄について、不正確な情報を排し、正確な情報を提供しなければならないという「説明義務」が認められています。
※たとえば、令和4年1月28日に言い渡された東京地方裁判所の判断(現代消費者法67号82頁所収)など。
ほかにも、日本には消費者契約法という法律があります。その法律には、「真実でないことを伝えられて、契約に至った場合には、その契約を取り消すことができますよ」といった条文があり、その条文に従って、契約を取り消せるかもしれません。ただし、消費者契約法が使えるか否かはケースバイケースであることにも注意が必要です。
※たとえば、平成24年3月27日に言い渡された東京地方裁判所の判断(事件番号:平成22年(ワ)第38195号)。
このように、業者の勧誘方法や説明内容によっては、説明義務違反や、消費者契約法違反という理屈を立てて、損害を回収できる可能性があります。
トラブルを未然に防ぐために…確認すべき5つの視点
弁護士に依頼して、損害を回収できる場合はありますが、そうはいっても、紛争やトラブルを未然に防ぐに越したことはありません。いずれにせよ、不動産投資にリスクがあることは間違いないので、事前に疑問点はできる限り払拭すべきです。たとえば、以下の視点は参考になるでしょう。
1.空室リスクは本当にないのか、リスクをどうしたら減らせるのか。
2.(空室リスクを減らすために)サブリース契約を締結する場合、中途の解約はできるのか。不利な点はないか。
3.購入しようとしている物件は適正価格なのか。
4.購入物件は将来的に値下がりする可能性があるのか。どの程度、下がることが想定されるのか。
5.本当に節税になるのか。節税の仕組み、建付けなど。
6.リスクを考慮した毎月のキャッシュフローの確認。本当に黒字になるのか。
投資の鉄則として、基本的に自身の生活が危ぶまれるほどのお金を投じることは、控えたほうがいいと思います。
加藤 慶二
弁護士
【注目のセミナー情報】
【事業投資】7月7日(火)オンライン開催
《投資収益×税金対策》
「ワーキングブース投資」の全貌
【国内不動産】7月14日(火)オンライン開催
東急不動産HDグループの会社とオリコが全面支援!
インバウンド時代の「民泊・旅館業」投資戦略
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】

