「決算書」を見れば、企業の特徴がわかる
図表1に記載されている数値は、日本の有名企業5社の財務諸表の構成比率である。
ここで質問である。
[QI]それぞれの企業名を下記の選択肢の中から選んでほしい。また、選択した理由について、各社の業種の特徴と関連付けながら説明してほしい。
・任天堂(ゲームのハード&ソフトの開発・製造・販売会社)2025年6月期
・PPIH(ドン・キホーテなどを展開する小売業のグループ)2025年3月期
・中外製薬(医薬品の製造・販売会社、ロシュグループ)2024年12月期
・ヒューリック(ビル賃貸、不動産販売などの不動産会社)2025年3月期
・東京エレクトロン(半導体製造設備の製造・販売会社)2024年12月期
研究開発費15.5%で5社トップ…最もわかりやすい「E社」
5社それぞれの業種の特徴に注目して、A~Eの企業名を考えていこう。
まず5社の中でかなり特徴があるのがE社である。まず売上高に対する研究開発費の比率が5社の中で最も高い15.5%となっている。
これは、大手メーカーの業種を超えた平均的な比率である4~5%程度と比較するとかなり高い水準である。ここまで研究開発費を使う業種は、製薬業界以外にはあまり考えられない。新薬の開発をベースにする製薬メーカーの場合は、研究開発費にかなりの資金を投入するが、その売上高に対する一般的な比率は15~25%である。
次に販売促進費は「?」となっており、基本的にほとんど使用していないことを意味している。製薬業界は、基本的に販売促進費を投入するような事業を行っていないので、これも業界の特徴といえる。
また、原価率が29.0%とかなり低く、売上高総利益率は70%を上回り非常に高くなっている。一般に薬そのものの原価は低めなので、良い新薬ができると莫大な利益につながる。ただ、良い薬を見つけ販売できるようになるまでが大変である。そのため大きな儲けをもとに、次の新薬の研究開発に資金を投入しているのである。
さらに、棚卸資産回転期間も258日と非常に長くなっている。これも製薬業界の特徴である。製薬業界の一般的な棚卸資産の保有日数は100~150日程度であるが、E社はそれ以上に長くなっている。
このように製薬企業の棚卸資産回転期間が長くなる理由は、患者が発生した時にすぐに供給できるようにするために棚卸資産を多めに保有する傾向があること、薬は日持ちする傾向が強く使用期限が長いため比較的長期間保有できること、錠剤など小さなものが多いので棚卸資産を多く保有してもあまり広い保管スペースは必要ないこと、さらに原価率が低いのでかなりの棚卸資産を保有しても金額的にはあまり大きくならないことなどである。
次に、E社の純資産の比率を見ると86.1%と非常に高くなっている。また金融資産も資産の45.1%となっており、財務的な強さは抜群である。これは一般に大手製薬メーカーに共通する傾向である。
新薬の開発には通常10年程度の期間がかかり、10年かけて研究開発をしても良い新薬が生み出せないかもしれない、という大きなリスクを取っている。それに耐えられるだけの強い財務で研究開発を支えているのである。
このように製薬メーカーはいろいろな特徴がある。E社は中外製薬である。



