(※写真はイメージです/PIXTA)

「安く買って高く売る」という投資の原則は誰もが知っています。しかし実際の市場では、多くの投資家が高値で買い、安値で売ってしまいます。なぜ人は同じ失敗を繰り返すのでしょうか。世界的投資家ハワード・マークス氏の『市場サイクルを極める 勝率を高める王道の投資哲学』は、その答えを「サイクル」という視点から解き明かします。景気や金融政策、投資家心理などが生み出す市場の波を理解することで、投資判断の精度を高める考え方を学べる一冊です。本記事では、チャンネル登録者数24万人の投資本要約YouTuber・タザキ氏が『しっかり儲ける投資家たちが読んでいる 投資の名著50冊を1冊にまとめてみた』(KADOKAWA)をもとに、ポイントを紹介します。

 『市場サイクルを極める 勝率を高める王道の投資哲学』

 

著:ハワード・マークス

訳:貫井 佳子/日本経済新聞出版

市場はなぜ繰り返し過熱し、冷え込むのか

本書の中心テーマは「市場サイクル」です。

 

私たちは日々の株価の上げ下げに注目しがちですが、著者は市場全体を大きな流れとして捉えることの重要性を説いています。

 

景気、企業業績、不動産価格、投資家心理、金融機関の融資姿勢など、経済にはさまざまなサイクルが存在しています。それぞれが独立しているわけではなく、相互に影響し合いながら市場全体の動きを形作っています。

 

投資家に求められるのは、未来を正確に予測することではありません。現在の市場がサイクルのどの位置にあるのかを見極めることだと著者は述べています。

景気サイクルを動かす中央銀行の役割

景気の変動には、各国の中央銀行による金融政策が大きな影響を与えています。

 

景気が過熱しインフレ圧力が高まると、中央銀行は金利引き上げなどを通じて景気を冷やそうとします。一方で景気後退局面では、金利を引き下げたり資金供給を増やしたりすることで経済活動を支えようとします。

 

こうした政策は企業の資金調達コストや消費者の行動に影響を与え、結果として企業業績や株価にも波及します。

 

市場を理解するうえでは、企業分析だけでなく金融政策の方向性にも目を向ける必要があることを本書は教えてくれます。

株価を大きく動かす「投資家心理」の正体

本書のなかでも特に印象的なのが、投資家心理に関する考察です。

 

株価は企業価値だけで決まるわけではありません。市場参加者の期待や不安といった感情が、時として実態以上に価格を動かします。

 

相場が好調な時期には、「まだ上がるはずだ」という期待が膨らみます。反対に市場が下落すると、「さらに下がるかもしれない」という恐怖が広がります。

 

その結果、楽観と悲観が繰り返され、市場価格は本来の価値から大きく乖離することがあります。

 

著者は、この心理の振れ幅こそが市場サイクルを理解するうえで欠かせない要素だと指摘しています。

好況時ほど高まるリスク許容度の落とし穴

興味深いのは、人々のリスクに対する考え方もサイクルによって変化するという点です。

 

相場が上昇を続ける局面では、多くの投資家が自信を深めます。リスクを軽視し、「今回は違う」「まだ上がる」と考えやすくなります。

 

しかし、こうした楽観論が広がる時期は、実は将来のリターンが縮小しやすい局面でもあります。

 

一方で、市場が大きく下落した後は、多くの人が投資を避けようとします。本来であれば割安な投資機会が存在する可能性が高いにもかかわらず、恐怖心によって行動できなくなるのです。

 

著者は、人間の心理が投資判断に与える影響を理解することが重要だと繰り返し強調しています。

市場を揺るがす「信用サイクル」を理解する

本書では、信用サイクルについても詳しく解説されています。

 

景気が良い時期には、金融機関は積極的に融資を行います。資金調達が容易になり、企業や投資家はより大きなリスクを取るようになります。

 

しかし、その状態が続くと過剰な借り入れや投資が積み重なり、やがて問題が表面化します。

 

景気が悪化すると、今度は金融機関が融資に慎重になり、資金繰りに苦しむ企業が増加します。その結果として倒産や投資縮小が発生し、景気後退が深まることもあります。

 

このような信用の拡大と縮小の繰り返しが、市場全体に大きな影響を与えているのです。

大衆と逆を行く「逆張り」が生む投資機会

本書を貫くメッセージの一つが、「大衆と同じ行動を取るだけでは優れた成果は得られない」という考え方です。

 

市場が熱狂している局面では、多くの人が強気になります。しかし、そのような時期ほど期待が価格に織り込まれ、将来の利益を得る余地は小さくなりがちです。

 

反対に、市場が悲観に包まれている局面では、多くの人が売却を急ぎます。しかし、そのような状況だからこそ割安な投資機会が生まれることがあります。

 

もちろん逆張りは簡単ではありません。周囲と異なる行動を取るには勇気が必要です。

 

それでも著者は、市場参加者の感情が極端に偏った局面にこそ、優れた投資機会が潜んでいると考えています。

サイクルを理解した人だけが冷静な判断を下せる

『市場サイクルを極める 勝率を高める王道の投資哲学』は、短期的な値動きを予測するための本ではありません。

 

むしろ、なぜ市場が過熱し、なぜ悲観に陥るのかという市場の本質を理解するための一冊です。

 

投資家心理、景気循環、信用環境などのサイクルを学ぶことで、市場の熱狂や恐怖に流されにくくなります。

 

将来を完璧に予測することはできなくても、現在の市場環境を冷静に把握することはできます。その積み重ねこそが、長期的な投資成果につながるのかもしれません。

 

 

タザキ

サラリーマン投資家YouTuber

 

 

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※本連載は、タザキ氏の著書『しっかり儲ける投資家たちが読んでいる 投資の名著50冊を1冊にまとめてみた』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

しっかり儲ける投資家たちが読んでいる 投資の名著50冊を1冊にまとめてみた

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