(※写真はイメージです/PIXTA)

老後資金に対する不安が語られる一方で、「元気なうちにお金を使いたい」と考える高齢者もいます。長年働き続け、子育ても終えたあと、「人生で一度くらいは夢を叶えたい」と感じるのは自然なことです。しかし、大きな支出は、その後の年金生活に少しずつ影を落とすことがあります。

「楽しかった。でも、怖い」…帰国後に始まった“節約の日々”

クルーズ旅行から戻った後、夫婦の生活は大きく変わりました。

 

まず変わったのは、お金の使い方です。以前は気軽に行っていた外食を減らし、スーパーでは値引きシールを気にするようになりました。電気代やガス代も、以前以上に意識するようになります。

 

「旅行中は、“こんな景色もう二度と見られない”と思ってお金を使っていました。でも帰ってきたら、“この先どうするんだろう”って気持ちになって」

 

さらに追い打ちをかけたのが、想定外の出費でした。

 

帰国から半年後、真由美さんに膝の不調が見つかり、通院とリハビリが始まりました。加えて、自宅の給湯器も故障。高齢になるほど、医療費や住宅修繕費は避けにくくなります。

 

「お金を使った直後に限って、いろいろ重なるんですよね」

 

ある日、真由美さんがぽつりと漏らしました。

 

「私たち、使いすぎたのかな」

 

その言葉に、隆一さんはすぐ答えられませんでした。

 

たしかに、2,000万円超の旅行は大きな支出です。もしそのお金が残っていれば、今ほど不安を感じずに済んだかもしれません。

 

それでも、隆一さんは静かに言いました。

 

「後悔はしてない。ただ、まだまだ老い先は長い。“楽しかった”だけでは終わらないよな」

 

現在、夫婦は再び家計を見直しています。旅行は近場中心にし、必要以上の支出を控える生活に戻りました。

 

一方で、真由美さんはこうも話します。

 

「もし行かなかったら、“あの時行けばよかった”って思っていた気もするんです」

 

老後資金は、「安心」のためのお金です。しかし同時に、「残りの人生をどう生きたいか」を支えるお金でもあります。使わなければ不安は減るかもしれません。けれど、使ったあとに残る現実もまた、簡単ではありません。

 

「一生に一度の贅沢」は、夫婦にかけがえのない思い出を残しました。その一方で、帰国後の生活には、“年金だけで暮らしていく重み”を静かに突きつけることにもなったのです。

 

 

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