(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢の親との同居は、家族にとって安心につながる一方、日々の負担や感情のすれ違いが積み重なることもあります。介護が必要な状態ではなくても、通院の付き添い、家事の補助、話し相手、金銭面の支援など、同居する子どもに負担が集中するケースは少なくありません。親を思う気持ちがあるほど、「つらい」と言い出せないまま、限界を迎えることがあります。

「見捨てるわけではない」…親子関係を守るための別居

真理さんが「このままではいけない」と強く感じたのは、転職を考え始めた頃でした。新しい職場に移れば、勤務時間や生活リズムも変わります。真理さんは母に相談しました。

 

「しばらく忙しくなるかもしれない」

 

すると和子さんは、ため息交じりに言いました。

 

「私のことはどうするの?」

 

その一言で、真理さんは言葉に詰まりました。

 

「母の人生を背負うために、自分の人生を止めているような気がしたんです」

 

もちろん、和子さんを大切に思う気持ちはありました。けれど、親子であっても、生活のすべてを共有し続けることが正解とは限りません。

 

内閣府『令和7年版高齢社会白書』では、65歳以上の一人暮らしの人は増加しており、令和2年時点で男性15.0%、女性22.1%、令和32年には男性26.1%、女性29.3%に達すると見込まれています。高齢期の暮らし方は多様化しており、家族と同居することだけが唯一の選択肢ではありません。

 

真理さんは、地域包括支援センターに相談しました。母の年金で借りられる高齢者向け住宅、見守りサービス、訪問介護、配食サービス。利用できる制度を一つずつ確認していくうちに、「離れて暮らしても支えられる」と思えるようになりました。

 

ある夜、真理さんは母に切り出しました。

 

「このまま一緒に暮らすのは、私には少し苦しい」

 

和子さんは驚き、しばらく黙っていました。

 

「私が邪魔になったの?」

 

その言葉に、真理さんは涙が出そうになりました。

 

「違う。嫌いになったわけじゃない。だからこそ、このまま一緒にいて、お互いを嫌いになりたくないの」

 

話し合いは簡単ではありませんでした。それでも数ヵ月かけて、和子さんは近隣の高齢者向け住宅へ移ることになりました。真理さんは週に数回顔を出し、通院や買い物は必要に応じて手伝っています。

 

別居後、和子さんは最初こそ寂しがりましたが、同じ住宅の入居者と話す機会も増えていきます。

 

「今日は隣の人とお茶を飲んだの」

 

その報告を聞いたとき、真理さんは少しだけ肩の力が抜けたといいます。

 

親と距離を置くことは、冷たい選択に見えるかもしれません。しかし、同居を続けることで子ども側が追い詰められ、親子関係そのものが壊れてしまうこともあります。

 

「離れたら、母に優しくできる時間が増えました」

 

同居をやめたことは、母を見捨てることではありませんでした。親子であり続けるために、必要な距離を取り戻す選択だったのです。

 

 

【関連記事】

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

 

「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】

 

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧