「息子を追い出す父親」になる…誠さんが下した決断
誠さんは、それまで「いつか自立するだろう」と考えていました。そんな中告げられた、悠人さんの“居座り宣言”。
「息子の人生を支え続けながら、自分の老後も守る。そんな余裕はありませんでした」
厚生労働省『国民生活基礎調査』では、高齢者世帯の所得の多くが公的年金に依存している実態が示されています。つまり、現役時代の収入が途絶えた後は、支出を増やし続けること自体が生活基盤を揺るがしかねません。
誠さんは悩み続けました。
「“出ていってくれ”なんて言ったら、親失格なんじゃないかと思っていました」
一方で、体力的な限界も感じ始めていました。仕事から帰宅しても、家事の多くは誠さんが担っています。
「このまま70代になったら、自分が息子を支える側ではいられなくなる」
そんな危機感が強まっていきました。
数日後、誠さんは意を決して悠人さんに話を切り出します。
「もう限界なんだ」
悠人さんは、最初は反発しました。
「今さらそんなこと言うの? 家族なのに?」
しかし、誠さんは初めて本音をぶつけました。
「家族だからこそ、このままじゃ駄目なんだよ。俺にも老後がある」
沈黙が続いた後、悠人さんは不機嫌そうに席を立ったといいます。その後もしばらく険悪な空気は続きました。しかし、誠さんは考えを変えませんでした。
家に入れる生活費、今後の仕事探し、期限を決めた自立準備。曖昧だった親子関係に、少しずつ線引きを始めたのです。
「もっと早く向き合うべきだったのかもしれません」
現在、悠人さんは職業訓練校への通学を検討し、アルバイトも増やし始めています。まだ完全な自立には至っていません。それでも誠さんは、「以前よりは前に進み始めた」と感じているそうです。
「追い出したいわけじゃないんです。ただ、“このままでいい”とは、もう言えなかった」
親子で暮らすこと自体が問題なのではありません。問題なのは、「いつか何とかなる」という曖昧さのまま、時間だけが過ぎていくことです。
65歳を迎えた誠さんにとって、“息子を支え続ける父”でいることと、“自分の老後を守ること”は、両立できない段階に来ていました。
「息子の人生も、自分の人生も、どちらも立て直さなきゃいけないんだと思います」
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