前回は、貴族文化が残る「ベルサイユ」の思い出を紹介しました。今回は、荘厳な「キリスト教建築」の思い出を見ていきましょう。

ステンドグラスの美しさが印象深いサント・シャペル

なぜキリスト教の建築は巨大なのか。それは初期の教徒は識字率が低く聖書が読めないため、絵を見せるしかなかったことにある。布教を急ぐために巨大にして威圧するのは、人間の本能である。オルガンのような楽器も大きい方が威圧できる。そこで容れ物としての建築も大きくなった。

 

日本と違い強度がある石材が豊富なのも有利で、建築の巨大技法は布教以前のギリシャ、ローマ建築に既に完成されていた。

 

旅の出発点はノートルダム大聖堂で、七月十六日の午前にその前に立った。有名すぎるゴチック最盛期の傑作で、意外と高く最頂部が六九メートル。起工が一二世紀、完成は一三四五年で日本では室町幕府成立の頃。

 

この地ではルネサンス以前で、庶民の多くは聖書も読めなかった。内部は薄暗く広い空間の中で左右のステンドグラスが原色で外光を受け、特にバラ窓が華麗で人々の心を惹きつける。外壁の聖人たちの彫刻も精緻で、石工たちの信仰心の深さを思う。

 

同じシテ島の五〇〇メートルほど西に前述のコンシェルジェリーの建物があり、その南隣に外見が地味なサント・シャペルのお堂がある。私にとって二度目の観覧だ。

 

十字軍時代の一二四八年(日本では北条氏が鎌倉幕府の実験を握った)七年という短期間で完成、ゴシック様式で幅一七メートル、奥行き三四メートル。人一人がやっと通れる狭い石のラセン階段をのぼり、二階の礼拝堂に入ると途端に息を飲んでしまうのは、そこに待っているのがステンドグラスによる光の饗宴、色彩の饗宴とでも表現すべき美の空間だからである。

 

万華鏡を壁面全部に拡げたように、旧約聖書の一一三四景の多彩がきらめく。しばらく帰りたくなくなるほど気持ちが良い。世の中で楽しいことや美しい物は稀だからだ。

 

七月十七日にパリの南西八〇キロメートルの穀倉地帯中心のシャルトルの街に着いた。仔牛のソテーなどの昼食をとってから、初めてのシャルトル大聖堂の前に立った。

 

大変に威圧的な初期ゴシックの典型だが、日本の鎌倉初期が起工した時期なのでロマネスク様式も混ざる。内部はここもステンドグラスに目を惹かれ、これはカラフルでデジタルな美しさと思う。

海の上に浮かぶ修道院「モン・サンミッシェル」

ここから二八〇キロメートル坦々と西に走り、サントル・ヴァル・ド・ロワール地域圏を抜けノルマンディー地域圏に入ると、最近有名になった三角形の島、モン・サンミッシェルが見えた。

 

ホテルで夕食後、なんとテレビでNHKのライブで女子サッカーなでしこジャパンとアメリカとのワールドカップ決勝戦を見ることができた。日本がワールドカップに優勝し、万歳と喜んだ。

 

翌朝七月十八日、この奇妙な島モン・サンミッシェルへ堤防で渡り、九〇メートルの石段を登って島の中心建造物大修道院に着いた。眺望が広大だ。

 

モン・サンミッシェルへ続く道
モン・サンミッシェルへ続く道

 

私は海のかなた一二〇キロメートルに点在する英領チャネル諸島に目をこらしてみたが霞んで見えない。ここは王室領なので、ケイマン諸島と並び世界大企業の脱税天国との噂。魔の諸島だ。

 

さて、修道士は現在を労働で償うため真剣に働き、ついに余剰農産物を信者に分け与え、商取引が始まった。賃借に利子を付け銀行が成立し近代資本主義成立の一因となった。ここから、「キリストの生涯」を人としてのイエスの生涯は短いので簡単に記すことにする。

21世紀の驚くべき海外旅行

21世紀の驚くべき海外旅行

藤間 敏雄

幻冬舎メディアコンサルティング

旅行する前に知っておきたい世界各国の歴史や政治状況を実際に各国へ訪れた著者が記す。 ロシアなら独自のインフラやモスクワの風格、 スペインは内戦の傷跡や王の気質を、 アメリカのドラッグ問題… 各国の宗教・伝統…

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