「税務調査が入るんじゃないか…?」総額3,000万円の発覚でよぎった恐怖
長男・Cさんの一人娘であるDさんは相続を放棄していました。そのため、この3,000万円は二男のAさんがすべて相続することとなりました。
しかし、Aさんは財産が手に入る喜びよりも、「多額の相続税がかかるのではないか」という恐怖が勝りました。
「20年も放置していたんだから、延滞税もとんでもない額になる。税務調査も入るんじゃないか……?」
焦燥感に駆られながらも、税制などを調べるAさん。すると、思いもよらない事実が判明します。
実は、Bさんの相続発生は平成27年の相続税法改正前であったため、当時の基礎控除額の範囲内に収まり、見つかった遺産に相続税がかかることはありませんでした。さらに、相続税の課税には最長7年の時効(除斥期間)があり、20年が経過した今、税務署から調査が入ることもなかったのです。
Aさんは安堵しつつも、「見知らぬ口座に大金を放置するのではなく、生前にしっかりと財産を整理して教えてほしかった」と、亡き父に対して少しだけ愚痴をこぼしました。
【司法書士が解説】親がすべき「財産目録」の作成、子がすべき「徹底した照会・調査」
相続税がかからないからといって、相続手続きを「放置してよい」わけではありません。大金を20年も眠らせる機会損失、相続人が増えることによるトラブル、現在の税法改正に伴う罰則リスクなどを防ぐためにも、確実な相続対策が求められます。
遺産整理手続きを進めるなかで、今回の事例のように相続人が把握していない預金などの金融資産が判明するケースは珍しくありません。
預金保険機構の統計によれば、休眠預貯金の額は日本全体で一年間に約1,300億円発生するといわれています。その要因は、「相続人が把握できていない被相続人名義の預貯金が相当数あるから」と考えられます。
こうした事態を防ぐためには、予防策と事後の対応策が必要です。
生前の予防策:親族が把握できる「財産目録」の作成
予防策として重要なのが「財産目録の作成」です。自身が元気なうちに、自身の相続準備のためにエンディングノートなどを活用し、万が一のときに親族が把握できるように財産目録を作成しておくべきです。
金融資産については、相続人のために資産を蓄えておくだけでは不十分であり、金融商品の種類や金融機関名などを相続人が把握できるように記録しておく必要があります。
事後の対応策:徹底した「金融機関の調査・照会」
相続人側における対応策としては、「徹底した調査」が求められます。相続手続きの際には、被相続人の預貯金などの金融資産の有無を詳しく調査することが望ましいです。
手間はかかりますが、念のために可能性のある金融機関には預金照会をしておくことが必要です。場合によっては、銀行だけでなく生命保険会社や証券会社などにも、保険や有価証券の有無の照会をする方法も検討すべきでしょう。
新井 健二
新井司法書士事務所
司法書士/ファイナンシャル・プランナー(CFP®)
